点と線

松本清張の文庫本は持っているものの、まだ読んだことはなく、このドラマで初めて
伝説のミステリを味わうことになった。
まだ前半しか見ていないが、やはり面白い。


ビートたけしが演じる迫力のある老刑事と、高橋克典が演じる警視庁の若い刑事の
コンビが、時刻表のトリックを暴いていく下りは、知ってはいるもののゾクゾクした。


ただ、「張り込み」など往年の映画と比べると、やはり同時代に作っていないので
迫力に劣る部分があり、ここ最近の昭和ノスタルジーの味付けが、ところどころで
鼻につく。


それに、これはしょうがないことだが、役者の顔がどうしても平成の顔なので、ど
こか泥臭さがないというか、シュッとしすぎている。
その中で、ビートたけしだけが異彩を放っており、彼のたたずまいだけが辛うじて
このドラマをリアルな部分につなぎとめている感じがした。


以前、黒澤明の「天国と地獄」や「生きる」のリメイクドラマがあったが、やはり
同じような違和感がぬぐえず、いまひとつ話に夢中になれなかったが、「点と線」
ビートたけしの異様な迫力が全体を引っ張っており、キャスティングの勝利といえる
だろう。


また、石坂浩二のナレーションも昭和の雰囲気をかもし出す重要な役割を演じており、
後半に失速しなければ、リメイクドラマとして成功の部類に入るのではないかと思う。


しかし、大作と銘打って製作されるドラマの多くが、1950年代の映画のリメイクなの
は、現在のテレビ局の怠慢ではなかろうか。
つまりは、いい脚本がないということであり、いかにテレビ局がソフト作りをないが
しろにしているか、ということの証左ではないかと思う。


できれば、東野圭吾の「天空の蜂」あたりを映画かドラマにして見せてもらいたいも
のだが、そのような力量があるかどうか、ちょっと疑問だ。


そもそも、執念に燃える刑事が事件を足で捜査する、というタイプの物語が、現在で
は成立しないので、昔の設定にせざるを得ないのかもしれない。


踊る大捜査線」以降、犯罪ドラマは組織捜査が主流になっているような気がするが、
昔の映画だってちゃんと組織捜査の中で刑事のキャラクターが光っていたのだから、
今だってやってやれないことはなかろう。


平成における執念の老刑事というキャラクターを作るのは難しいだろうが、誰かチャ
レンジしてみるべきだろうと思う。
そもそも団塊の世代と執念は水と油だから無理もないけれど。


本文と写真はまったく関係ありません

日付は去年のものです