ブラック企業

ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪 (文春新書)

ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪 (文春新書)

著者によれば、日本の企業はほとんどがブラック企業化する可能性が
あるらしい。


というのも、高度成長期に労使の間で、終身雇用と年功賃金を約束する
代わりに、サービス残業や単身赴任を引き受ける暗黙の了解が壊れた
結果がブラック企業だからだ。


つまりブラック企業とは、終身雇用や年功賃金を反故にしておいて、
従業員に過酷な労働を強いる会社のことであり、社会の構造的変化が
それを生み出した、と著者は述べている。


そこで暗躍しているのが弁護士や社会保険労務士だという。
法律をかいくぐるような方法で社員を使い捨てるシステムを、いったい
誰が考えたのだろうと不思議に思っていたが、悪辣な弁護士やコンサル
タントが黒幕だったのである。


本書では、訴訟があった企業(ウェザーニューズ大庄ワタミSHOP99
が実名で出ている。
そして、実名を出せないがユニクロと思われる企業の例が出ている。
IT企業のY社というのが分からなかったが、業界の人ならすぐに分かる
のだろう。


いずれも新入社員に酷いことを平気でさせており、こんな会社のものは
いち消費者として絶対に買わないと心に誓った。
(個人ではどうしようもないものもあるが……)


このような焼畑農業的な企業経営は、自分が稼ぐだけ稼いだら後のことは
知らないよ、という発想でないとできない。
資源が無限にあるとでも思っているのだろうか? 思っているんだろうな。


では、ブラック企業の経営者が稼いだ金は何に使われているのだろう。
豪邸や高級車といったありふれたものだろうか。それとも金融機関を
通して投資されているのだろうか。
いずれにせよ、自分の欲のためにしか使われていないはずだ。
若者から搾取した利益は、死に金になっているのである。


こうしたやりたい放題を放置していいはずがない。
著者が提案する、新しい労使関係の構築ができればいいのだが。
どうも人類は放っておくと奴隷を使いたがるので、新しい奴隷解放宣言が
必要ではなかろうか。