イノさんのトランク

BSプレミアムで「イノさんのトランク」という、本多猪四郎の遺品を
めぐるドキュメントを見た。素晴らしかった。


ゴジラ」を監督したことで有名だが、特撮映画が多かったことで、
世間一般の評価はそれほど高くない。
が、見る目のある人は偉大な映画監督だと思っている(はずだ)。


本多猪四郎黒澤明は生涯ずっと友情を保ち続け、晩年の黒澤作品では
演出補佐というかたちで、ずっと映画製作の現場に付き添っていた。
なに、この藤子不二雄みたいな感じ、と思ってしまったが、キャリア的
には逆なのかもしれない。


ドキュメントでは、黒澤明が自殺未遂を報道されてから、10年ぐらい
お互いに交流がなかったという。
ところが、本多が自宅の近所のゴルフ練習場でクラブを振っていたら、
隣にひょいと黒澤が現れたという。
そこでしばらく映画の話に花が咲いたらしい。


ふたりのお爺さんが、打ちっぱなしの練習場でゴルフそっちのけで映画の
話をして盛り上がっている。
周りの人は誰も彼らが「七人の侍」の監督と「ゴジラ」の監督であること
を知らない。
すごいツーショットである。


Wikipedia を見ると、マーティン・スコセッシが「夢」の撮影で来日した
とき、本多猪四郎に会いたがっていた、というエピソードが書いてあった。
私はこれをスピルバーグが来日したときの話と勘違いしていた。


ただ、たしかスピルバーグ本多猪四郎には最大限の敬意を払っていた
エピソードがあったような気がする。


ところで、本多は徴兵されて中国戦線に8年もいたそうだが、出征直後に
長女が生まれたのはともかく、終戦後に戻ってきたときには2歳の長男も
いたとある。
ときどきは日本に戻っていなければ辻褄が合わない。
どういうスケジュールで従軍していたのだろうか?