法人税

最近、日本の法人税は外国に比べて高いから下げるべきである、という
論調が目立つ。


私はこれに引っかかるものを感じていたのだが、21日付の朝日新聞
「記者有論」という記事で、編集委員の安井孝之という人が以下のよう
な反論を載せていた。

成長戦略 減税でiPadは生まれるのか


 アップル(米)6.3%▽ノキアフィンランド)2.4%▽サムスン電子(韓国)1.7%▽
パナソニック(日本)1.6%▽ソニー(同)1.3%。
 世界のエレクトロニクス企業の、納税額の売上高比率を計算してみた(2007年度と09
年度の平均。08年度はリーマン・ショックの影響が大きいため除いた)。


 この数字を眺めると、日本の法人課税(地方税も含む)は重い、という「常識」とは
異なる姿が見える。売上高から税金をどれほど払っているのか、つまり人件費などと同
じようにコストとして見ると、多機能携帯端末のiPhoneiPadのヒットで好業績をあげ
税引き前の利益率が20%を超えるアップルが最も税金を払っている。


 サムスンも、韓国の実効税率は24.2%と低いが、利益率は9%台と高く、納税額の水準
は日本勢を少し上回る。日本勢は税率(40.7%)は高いが、各社の利益が少なく、実際
に支払う税額は少ない。


「日本の法人課税の税率は諸外国に比べて高い。税率を引き下げて、競争力を増やさ
なければならない」。経済界も政治も同じ方向を向いている。政府は成長戦略に法人
税率下げを盛り込んだ。税率下げは企業負担を軽くし、確かに競争力を増すが、実際
の効果が大きいかどうかは話は別である。


 日本企業の利益率は世界の優良企業に比べて低い。一方、アップルは日本勢が赤字
に沈んだ08年度も20%を超える利益率だった。付加価値の高い商品を生み、利益を
得て、税金を払っても再投資に回す資金が十分残る、という好循環を維持している。


 こうした経営ができるのは、消費者が飛びつく商品やサービスを提供し続ける経営
力があるからだ。初代iPhoneの発売からすでに3年。今年になってiPadも発売した。か
つては家電・オーディオ分野で世界をリードした日本勢からはアップルに対抗する商
品は出てこない。日本勢の苦境は税率の高さが主因ではなく、経営力が劣っていると
いうことに尽きる。


 人口が縮小する国内市場で多くの企業がひしめく日本は過当競争を招きがちだ。そ
こで体力をすり減らしていることも、新しいビジネスモデルを築けず競争力をなくし
ている一因だ。付加価値の高いビジネスモデルを富につなげる経営力を発揮する会社
に進化する努力こそが大切なのだ。経済界は競争力アップのため、法人税率の引き下
げを求めているが、まず利益率を引き上げるように知恵を絞るのが先である。


 税率が高いから日本勢からiPadが生まれなかったわけではない。税率を下げれば
iPadが生まれる保証もない。5%の法人税率下げで1兆円の財源がいる。減税の費用
対効果を見極める「仕分け作業」が必要だ。


いやにiPadを礼賛しているのが笑えるが、大筋には合意できる。
自分の無能を棚に上げて、税率を引き下げてくれというのはいかがなものか。


法人税というのは、いわば国が企業に求める「ショバ代」であろう。
うちの国で商売して儲けたら、こんだけ払ってちょうだいね、ということだ。


経済界では、このままでは外資が日本に企業を持ってこないし、日本の企業も
外国へ逃げてしまうぞ、と恫喝しているが、そんなことはあるまい。
いったいどのくらいの企業が日本の税率を嫌って脱出しているのか、数字をあ
げていただきたい。


ショバ代には、日本の治安やインフラの良さも含まれているだろう。
それらも勘案して、高いか低いかを言ってもらいたい。


また、引き下げられた法人税の分を設備投資にまわす、というのが企業の言い分
だが、そのまま株主の配当に回ったりはしないのか。
何に使おうが企業の勝手なのだから、誰にも文句は言えない。


私は、企業性悪説を採る者である。
経営者は、放っておくと慾にまみれてロクなことをしない。
だから様々な規制が必要だし、政治に口出しもする必要はないと考える。


こういう左翼的な考え方はすっかり衰退してしまったが、目先の利益を追って
中間層を潰して、結局は国全体がしぼんでしまった現在の状況は、明らかに是
正されるべきだと思う。


日本人の多くは、貧乏にはなりたくないが、死ぬほど競争して金持ちになりたく
もないはずだ。
競争が大好きな奴が偉そうなことを言っているのを何とかしなければなるまい。