カレー

今日、偶然に元教え子に会いました。
懐かしいのでしばらく話をしていると、夏休みに合宿に行った、との
ことです。


その子は受験生で、私が以前勤めていた塾を辞めて、大手の塾に転塾
していました。


まあセンセー、聞いてくださいよ、と何を話すのかと思うと、塾が主催
する一泊二日の勉強合宿中の食事のことでした。
子供には珍しく、その子はカレーが嫌いだったのですが、なんと昼食
にカレーが出たのだそうです。


主催者側も、まさかカレーの嫌いな子がいるとは思わなかったのでしょ
う。みんながどんどんお代わりをしているとき、その子は何も食べな
かったそうです。
せめてご飯だけでも食べたらいいのに、と私が言ったのですが、腹が
立ったので一粒も食べなかった、と妙に頑固なのです。


当然ですが、晩ご飯までに目が回るほどお腹がすきました。
周りはジュースの自販機しかなく、しかも外出はできません。
それでも、塾の先生の目を盗んで自販機までダッシュして、たまたま
売っていたカロリーメイトを二個買ったそうです。


その二個を、部屋で隠れてむさぼるように食べて空腹を凌いだとか。
友だちにお菓子をもらうとかすればいいのに、と言ったのですが、お
菓子は持ち込み禁止だったのだそうです。


いやー、あのときはマジで参りましたよセンセー、と笑っていましたが、
カレーが嫌いな人は、この先にもいろいろ苦労が待っているだろう、
と不憫になりました。


ちょうど田舎の人が、まさか刺身が嫌いな人はいないだろう、と魚介
類オンリーの食事を出して、私がげっそりするようなものです。


かといって、最大多数の人はカレーや刺身が好きなのですから、我々
マイノリティーは泣き寝入りをするしかないのです。


好き嫌いなく何でも食べられるというのは、本当に素晴らしいことだ
と思うのでした。