絵の上手さとは

BSマンガ夜話」で山田芳裕の“へうげもの”を採りあげていた。
私の大好きな作品なので楽しみにして見た。


ところが、レギュラーのいしかわじゅんが、山田芳裕の絵を下手だと連呼しており、
これは違うんじゃないか、と思った。
おそらくその発言に違和感があったのだろう、レギュラーの夏目房之介もゲストの
山田五郎も、彼の絵の見事さについてフォローしていた。


以前から、いしかわじゅんはマンガ家の絵の上手い下手を格付けしている。
そして、マンガは絵の上手さではなく総合的なマンガ力が大事なのだ、と言い訳す
る。


私もその点には同意する。
絵の上手さはマンガの表現の一部にすぎないからだ。


ところで、いしかわじゅんのいう絵の上手さとは一体なんだろうか? 
デッサン力のことか。
だとすると、大友克洋宮谷一彦のような人が該当するだろう。
彼らの圧倒的な画力は、たしかに十分読者を惹きつけられる。


では、山田芳裕にデッサン力はないのか? 
あるのだ。
例えば、茶碗の絵を見れば分かる人にはすぐに分かるはずだ。
そうでないと、あれほどのパースで人間を描いたり、絶妙な表情を対比させたりは
できない。


そうすると、いしかわじゅんは何をもって山田芳裕の絵を下手だと決めつけている
のだろうか? 
本人の主観だけで言い放ったとすれば、ずいぶん無責任な話である。


以前、高橋留美子の絵が下手だといって物議を醸したり、永井豪が自分で絵を描い
ていないと言って本人を激怒させたりしており、私はいしかわじゅんの話をあまり
信頼していなかったのだが、今回の件でハッキリした。
いしかわじゅんはもうダメだ。


私はいしかわじゅんに問いたい。
ほかのマンガ家の絵を下手だということで、あなた以外の誰がハッピーになるとい
うのですか? と。