逮捕術

かなり前、私が西荻に住んでいるころの話だが、夜中に何かの用事で駅前の方に行った。
たぶんコンビニで買い物したんだと思う。


その帰り道、ちょうど高架下の西友の入り口あたりで、一人の酔漢が走って逃げていた。
後ろの方を振り向いて「バーカ、バーカ!」と叫んでいる。
すると、猛然と警官が追いついてきて、あっという間に取り押さえられてしまった。
酔漢は一瞬で腕をねじりあげられていた。


私は彼が何をして追いかけられていたのか分からなかったが、目の前で逮捕術を見られて、
すげーなー、と感心した。
若い警官だったが、頼もしく思った。
自分がそんなことをされると嫌だけど。


外国では、こういう場合、すぐに発砲するのだろうか? 
逮捕術というものが発達しているのは、もしかしたら日本だけなのかもしれない。


考えてみれば、逮捕術は相手が飛び道具を持っていないことを前提にしているわけである。
いま、民間にどのくらい拳銃が流通しているか分からないが、ほとんどの一般市民は触っ
たこともないはずだ。


私はそういう社会で育まれてきた逮捕術というものを、可憐だと思う。
平和ボケと言われるかもしれないが、このまま拳銃がない社会が続けばいいな、と。