ミイラ

ふと思ったのだが、現代の日本でミイラは作れるのだろうか? 


たとえば、大金持ちが気まぐれに自分の遺体をエジプトのミイラのようにしたい、と思った
としましょう。
そのとき、合法的に処理できるのかどうか。


米国ではエンバーミングという処理方法があるらしいが、これは遺体をまるで眠っているか
のような状態で保存するもので、ミイラではない。
もっと干からびさせて、即身仏みたいな感じにしたいとき、請け負う人がいるのか、という
話だ。


いまでも、不幸な死に方をして、発見されたときにはミイラ状態だった、ということはある
だろうが、そうなるまでに腐臭が漂うだろうし、時間もかかるだろう。


内臓を取って、全体を乾燥させたらできそうなものだが、そもそも人間の死体を乾燥するよ
うな施設はあるまい。
どこかの工場でフリーズドライにしてもらえばいいかもしれないが、貸してくれるところは
絶対にないと思う。


ていうか、素人が死体をいじったら、それは死体損壊になって、刑法に触れるはずだ。
やるとしたら、行政の許可をもらって(もらえないと思うが)、葬儀屋がやるのではなかろ
うか。
(調べると、沖縄では風葬の習慣があって、遺体をそのまま放置することもあるらしい)


それに、ミイラ業者がいたとしても、人に言える職業ではない。
誰かに、仕事は何をされてますか、と訊ねられたとき、ええ、ミイラづくりを少々、などと
答えられるわけがない。


しかし、ミイラの人気は今でも根強い。
大英博物館に行ったときも、最も混雑していたのはエジプトのミイラの展示だった。
やはり、何か神秘的なものが人を惹きつけているのだろう。


保存状態がよければ何千年も持つのだから、ミイラこそ遺体保存に最適な方法なのかもしれ
ない。
千の風になって」ブームで、散骨が流行る場合もあるだろうが、誰かミイラになることに
チャレンジしてほしいものである。


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