おれだけのおまえ

10代から20代の若者の間では、デートDVというのがあるらしい。
交際相手に暴力をふるうのは最低だが、それだけでなく、行動を束縛するのが困るのだそうだ。


具体的には、携帯電話に出ないと怒るとか、勝手に相手の携帯電話を見る、ひどいのになると
異性のアドレスを全て消去させるというのもあるらしい。


これは携帯電話というツールが普及したゆえの悩みだろう。
そんなものがなければ、交際相手がどこで何をしていようが、知る手段がないのだから。


もしかしたら、自分は裏切られているのではないか、という不安が、デートDVを加速させてい
るのだろう。不安は恐怖に変わり、ささいな出来事でも過剰に反応してしまうことになる。


私が思うに、この不安の根底には、自分と付き合っている人間を完全に自分のコントロール
に置きたい、という欲望がある。
そして、この欲望は彼らの親から受け継いだものではなかろうかと推測する。


というのも、いまの若者の親たちは、自分の子供をコントロールすることに異常な情熱を注い
でいるように見えるからだ。
たとえば、子供向けの携帯のGPS機能を使って、常にどこで何をしているのか把握したがる
とか、表面上は『何をしてもいいよ』と言っておきながら、限られた選択肢しか与えず、親の
望むような生き方をさせる、といった行為がそれに当たるだろう。


そうした人間関係を親から学んだ子供たちが、いざ異性と付き合うとなると、相手にも同じこ
とを求めるのは当然だと思う。
親の束縛をウザいと思う子供が、交際相手を無意識に束縛するのは、フロイト先生でなくとも
分かることだろう。


おそらく、若者のセックスがカジュアル化してしまったことも、お互いを信用できなくなって
しまう一因かもしれない。


浮気するのは悪いことだ、というモラルは頑として存在しているから、束縛する側にとっては
安易に自分を正しい立場に置けるわけである。
あるいは、男女交際をビジネスの契約のように考えて、一度契約したことは必ず守らなければ
ならない、と思っているのかもしれない。


しかし、人間の気持ちは毎秒変わるものである。
今日は好きでも、明日には好きでなくなっているかもしれない。


そこを飲み込んだ上で、パートナーを信頼することは、大人にならないとできないだろう。
いや、大人でも難しいかな。だから4組に1組は離婚するわけだが。


自分が付き合っている相手は、自分だけの所有物である、と錯覚させているのは、恋愛イデオ
ロギーの負の側面だろう。
携帯電話が刺激するこのような欲望は、今後も止まることなく膨らみ続けるかもしれない。


そういうのを、恋愛インフレと呼ぶのだろうか。


本文と写真はまったく関係ありません

ル*’-’リ<くまいちょー、さっき誰と話してたのー? ねー? 
川 釻_ゝ釻||<‥‥‥‥