私は幸いほとんど便秘をしたことがないが、外国へ行って肉ばかり食べているとなることが
ある。あるいは長時間飛行機に乗っていると、気圧の関係か出にくくなることも多い。
あれはなかなか苦しいものである。
それはともかく、便秘にはどういう意味があるのだろうか、と考えてみた。
ここ百年はいざしらず、人類は基本的に腹ペコであったことは間違いない。
腹ペコは言いすぎにしても、四六時中いつでもカロリーの高い食べ物が安価に手に入ること
はなかったであろう。
そうすると、病気ならともかく、一度体内に取り込んだものは、なかなか外には出さないよ
うにしていたのではなかろうか。
もちろん、必要なくなったものは、速やかに体外へ排出しなければいけないのだが、できれ
ばカスカスになるまで養分を吸い尽くしてから出していたのではないかと。
それに、排便中は非常に無防備になる。敵に襲われたらひとたまりもない。
なるべくしない方が、生きる確率が高くなる。
また、糞は情報の塊でもある。
人間は他の動物の糞を見て、たくさんのことを知るが、動物もにおいを嗅いで同じような情
報処理をしているだろう。
そういうものは、みだりに撒き散らさない方がいいはずだ。
よって、程度にもよるが、便の排出は多いよりも少ない方がメリットが大きいことになる。
旧石器時代から、人類はだいたいどのくらいの頻度で排便していたか分からないが、現在よ
りも少なかったのではなかろうか。
あるいは、消化の悪いものを食べていたから、しょっちゅう出していたかもしれない。
だが、胃腸が丈夫じゃないと、とても生きていけなかっただろうから、私はやはり便秘が多
かったのではないかと想像する。
現在の女性は、便秘と肩こりのどちらか、あるいは両方に悩んでいるらしい。
便秘は苦しくなったり、まれに中毒死することもあるが、多くの場合はそれほど深刻ではな
く、ダイエットや運動不足が原因であろう。
便秘薬のCMが流されているということは、それなりに大きい市場があるのだと思うが、毎日
便通がないとおかしい、と思わせるのはいかがなものか。
精神と内臓は密接に関係しているのだから、間違った情報で薬を売らないようにしてほしい
ものである。