今日、1000円の床屋で散髪をしたとき、そこの美容師さんに聞いたのだが、中国人の男性は
散髪するとき、髪を梳いていない人が多いらしい。
なるほど、言われてみれば昔のジャッキー・チェンの映画に出てくる人なんかは、髪の毛の
ボリュームがかなりある。
おそらく日本でも、男の髪の毛を梳くのが普通になったのは、1980年代以降ではなかろうか。
それまでは、髪の毛の密度など別に問題ではなかったと思う。だってみんながそうだったら、ダサい
も何もないのだから。
では、なぜ髪の毛の量を気にするようになったのか。
私は、欧米の白人に対する劣等感ではなかろうかと思う。
彼らは東洋人のような密度の高い剛毛ではなく、猫毛でウェーブのかかった毛髪である。
もし、黄色人種として何の劣等感もなければ、わざわざ特殊なハサミを発明してまで、髪の毛のボリュ
ームを減らしたりはしないだろう。
この時点で、美的感覚を西欧人に乗っ取られているのではなかろうか。
昔読んだ、伊丹十三の「ヨーロッパ退屈日記」というエッセイに、刈上げについての考察があったと
思う。
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生え際に似せるためではないか、と結論づけていた。
いま、後頭部をバリカンで刈上げている人はあまり見かけないけれど、一昔前の男のヘアスタイルに
は多く見られたし、私の中学のときは学校が刈上げスタイルの髪型を指定してさえいた。
このヘアスタイルが格好いいとされたのは、明治時代の最初と、テクノカットが流行した時代ぐらい
だと思う。
確かめたわけではなく、ただの勘なのだが、日本人は世界一髪の毛を染めているのではなかろうか。
そもそも白人は茶髪や金髪にしなくてもいいし、他の東洋人の国でも染毛剤が普及していないような
気がする。
(もしかしたら米国人の方が、日本人より髪の毛を染めているかもしれないが)
アジアに西欧の文明が入ってくると、まず若い女に欧米的なファッションが流行し、やがて定着する。
男が垢抜けてくるのは、その後だ。
もし、茶髪の方が軽く見えて頭も小さく見られる、ということを中国人の若者が信じたら、あの大陸
で大量の染毛剤が使われることになるだろう。
それに付随するトラブルが、いまから目に見えるようだ。
赤毛のアンが“カラスの濡れ羽色”と憧れた黒髪も、せっせと茶色に染められているが、そろそろ美
的感覚の軸をもう一つぐらい持つべきではなかろうか。
梳きバサミの話から髪の色の話に変わってしまったが、資生堂のシャンプーのCMは、黒髪派にとって
は頼もしく映る。