よくスポーツ選手が活躍すると、少年マガジンなどでマンガになることがある。
「野茂英雄物語」とか「中田英寿物語」とかそういうやつだ。
あくまでも少年向けに脚色しているから、オッサンが読むと美化しすぎているエピソードもあるが、
ちゃんと取材している作品だと面白く読める。
夏目雅子の生涯を描いた「ひまわり」というドラマも、いってみればテレビ向けに脚色しているはず
で、本当はもっとドロドロした部分がたくさんあったのだろうと思う。
もちろん、そういうのがないから駄作だというわけではない。
夭逝した美人のイメージを壊すことなく、仲間由紀恵がうまく演じており、これはこれでいいドラマ
だった。彼女はこれで一皮剥けたような気がする。
ただ、このドラマの原作を書いた夏目雅子の母親は、私から見れば非常に問題のある人物に思えた。
こういうタイプの人は他人に不寛容であり、理屈が通用せず、感情だけで考えるのである。
ドラマでは三田佳子が、厳しいながらも愛情のある母親を演じていたが、これはあくまでも原作者
(つまり夏目雅子の母親)の主観であり、本当はどうだったのか近親者でないと分からない。
実際、ドラマの終盤では、白血病に冒された夏目雅子が、母親に愛情を確認するシーンがある。
ということは、少なくとも娘にとっては、母親の愛情を無条件には感じていなかったのだ。
なかなか辛い話である。
こういう母親を持った子供は、精神的に不安定になるだろう。
女優になろうと思った動機も、母親の愛情を得るためだった、と語られている。
今の時代だったら、リストカットしていたかもしれない。
夏目雅子の母親は、娘のそうした葛藤を死ぬ前にようやく気づいてやることができた。
恐らく、娘が白血病になっていなければ、彼女がどれほど不安だったかを想像することもなかっただ
ろう。
そのような視野の狭さや無教養を、私は強く憎むのであるが、そういう人は自ら気づく以外に蒙を
開くことはない。
他人なら絶対に近寄りたくないが、親族ならどうにか折り合うしかないだろう。
まして、親がそうした悪意のない不寛容さを持っていた場合、子供は反発して絶縁するか、忍耐して
受け入れるかしかない。
夏目雅子は、ある意味、死をもってその苦しみから逃れられたのかもしれない。