坂の上の雲ミュージアム

昨日の伊丹十三記念館に引き続き、今日は坂の上の雲ミュージアムに行ってきた。
もしかして「日本三大がっかりミュージアム」のひとつではなかろうか。
あとの二つは知らないけど。


小説「坂の上の雲」は、左翼的な言説で否定されてきた明治時代のエートスを、昭和40年代に復活
させようとした司馬遼太郎の試みだったと思うが、現在ではいささか読後のニュアンスが違ってく
るかもしれない。


というのも、司馬が当時仮想敵としていたであろう左翼が衰退し、逆に「坂の上の雲」を利用して
再び戦争の準備を始めようとする勢力が台頭してきつつあるからだ。
そういう危惧があったからこそ、司馬遼太郎が生存中は一切の映像化を許可しなかったのだろう。


しかし、思想はともかく小説としての面白さは司馬作品の中でも一、二を争うものだと思う。
特に日本海海戦に至るまでのエピソードの積み重ねや、二○三高地の激戦の背後にある陸軍の苦悩
など、読書にドライブがかかる。


坂の上の雲」の読者の多くは、そういう話で秋山兄弟がどのように活躍したか、という展示を見
たいのだと想像するが、このミュージアムはむしろ小説の前半部分に重点を置いているようだ。
つまり、明治時代の学生生活とか庶民の暮らしがどういったものだったのか、という民俗誌的な内
容なので、小説のノリノリの面白さを期待すると肩透かしをくらったような気分になる。
むしろ日本海海戦に関しては、横須賀の戦艦三笠の内部の方が充実しているだろう。


恐らく、地元松山で「坂の上の雲」のミュージアムを作るなら、正岡子規を外すわけにはいかず、
残念ながら子規は日露戦争が始まる前に亡くなっている。
そのため、なるべく前半部分をとりあげたいのは分かるが、松山にはこのミュージアムとは別に
子規記念博物館というものがあり、そちらでも秋山真之との交流が紹介されている。
この二つの博物館の連携が、今後のカギになるだろう。


今のままでは、客足がジリ貧になることは確実で、「坂の上の雲」の文庫本を買った方がマシだ、
という評価になるような気がする。


蛇足になるが、ミュージアム内のグッズも伊丹十三記念館に比べるとショボい。
せっかく来たのに、魅力的なものがないのはいかがなものかと思う。
松山の菓子屋と協力して、雲をモチーフにしたふわふわしたスイーツを開発してみてはどうだろう
か? 


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