街場の中国論

街場の中国論

街場の中国論

もともとは大学院のゼミで喋った内容をベースにしているそうだ。
だからなのか、講義を再録しているみたいに読みやすく面白かった。


著者もあとがきで触れているが、これは中国問題の専門家が書いたものではないので、学問的には
いろいろと突っ込みどころがあるらしい。
私はそのあたりがよく分からなかったのだが、素人だから当たり前か。


しかし、なぜ江沢民反日教育をするようになったのか、という説明は、これを読んで初めて腑に
落ちた(ような気がする)。
国内統御の問題として、何かに怒りの矛先を向けないとヤバい状況があったからではないか、とい
う説明だったが、当時の状況のディティールは現在も謎のままである。
政治的な情報がまったく外に出てこないのが、いかにも中国というか共産圏らしい。


私が前から疑問に思っていたのは、なぜ中国人は農民を搾取するのか、という問題だ。
この本にその答が書かれているわけではないが、華夷秩序の概念を導入すると、都市部に住んでい
る=皇帝の近くにいるほど偉くて、そこから外に広がるにつれて野蛮になっていく、という世界観
が見える。


しかし、中国の歴史では、農民が食えなくなると反乱が起こり王朝が交代するわけで、最初から農
民を大事にしておけば、社会は安定するんじゃなかろうか、と思う。
で、それをやったのが毛沢東なわけだが、大躍進や文化大革命で破綻した。
やっぱり農民はバカだったんじゃねーの? という結論が出たようなのである。


だから、現在も農民は戸籍を移せないし、民工となって都市部で辛い仕事をしている。
彼らの不満が爆発しない理由はないと思うのだが、そういう情報は公式に発表されることはない。
たぶん、この不透明さが中国嫌いを増やしているのではなかろうか。


国土と人口があまりに巨大すぎるので、私なんかはつい連邦制度にする中国分割論を考えてしまう。
合理的な方法で国を治めないと、いつかクラッシュする可能性は高いはずだ。
クラッシュすれば、周辺国はおろか地球規模で大混乱が発生すると予測される。
そうならないためには、一気に現状を変えるのではなく、現在の体制を少しづつ手直しする方がいい、
という話が書いてあって、なるほどと思った。


ま、私は中国人と直接つきあったことも話したことすらないのだから、メディアが伝える中国のイメ
ージを受け取っているだけだ。
なるべくバランスをとって考えたいと思っているけれど、どちらかといえば嫌中派である。


先日から報道されている中国の食品問題だって、それみたことか、と思わないではなかった。
こんなことで北京オリンピックは無事に開催できるんだろうか、という話も一部で盛り上がっている。
外国の選手は現地のものを食べてはいけない、などと言われていた。


なるほど、確かに危険なものはあるかもしれないが、それでも中国には12万人もの日本人が長期
滞在しているのである。彼らはふだん何を食っておるのだろう。
まさか、三食すべてを日本からの空輸でまかなっているわけではあるまい。
あまり神経質になるのもいかがなものかと思う。


人間は一度に二つのことに対して怒れない。
政治家はこのことを熟知しているので、大問題から目をそらすために別の問題を煽るのである。
つい、カッとなってしまうのは、まだまだ修行が足りないということですかね。


本文と写真はまったく関係ありません

川´・_o・)<中国からの留学生ジュンジュンです