美術館にエッシャー展を見に行った。
エッシャーというと、「滝」などのだまし絵が代表的だが、
この美術展で分かったのは、彼が平面充填(あるいは平面分割)の巨匠だったことだ。
略歴を見ていくと、美術学校を出てからずっと版画を彫っているようだが、食えるようになったのは中
年以降らしい。それまでは親の援助を受けてきたそうだ。
しかし、本人は自分の人生は版画しかないと確信していたようなので、天才らしい生き方なのだろう。
エッシャーが好きとかいうと、たぶん美術好きな人からはバカにされるような気がするが、確かに彼の
後期の作品は、絵画というよりは装飾美術のような感じを受ける。
つまり、タイルやモザイクのような飾りに近いものがあって、そんなのは絵画の範疇に入らない、と思
われていたのかもしれない。
実際、エッシャーは美術界で早くから認められることはなく、むしろ結晶学者や数学者に好意を持たれ
ていたそうだ。感覚的には理系の人だったのかもしれない。本人は数学ができなかったと言っているが。
米国ではポップアートとして若者に受けたようで、そのあたりもヨーロッパ絵画のサークルからはあま
り尊敬されなかった理由かもしれない。
マグリットやダリのようなシュールリアリズムの画家も同様の扱いだったのかしら。
エッシャーがとりつかれたように描いた平面充填の絵は、スペインのアルハンブラ宮殿の装飾からヒン
トを得たということだ。イスラム芸術では偶像を描けなかったので、複雑な幾何学模様が発達したそう
だが、エッシャーは方眼紙にそれらを写し取り、技法を学んだらしい。
彼はイスラム教徒ではないので、平面充填のモチーフに動物や人間を選ぶことができた。
なぜかトカゲや魚が多い。そして、少し抽象化しているので、目がすごく可愛いのである。
私が好きなのは「Depth」という作品の魚だ。
この絵を立体にしたフィギュアが美術館に置いてあった。
すごく欲しかったけど、300円のガチャガチャでしか手に入らないので諦めた。
バラ売りしてくれればいいのに。
なぜかハウステンボスが日本でのエッシャーグッズの独占販売権を持っているらしく、会場でもポスター
やらTシャツが売っていた。エッシャーがオランダ生まれだからだろうか。
実はエッシャーの平面充填のモチーフは、「ジョジョの奇妙な冒険」43巻に収録されている、エニグマと
いうスタンドとの闘いで見事に表現されている。
きっと荒木飛呂彦もエッシャーが好きに違いない。
私がエッシャー的な世界に最初に触れたのは、たぶん安野光雅の「ふしぎなえ」という絵本だったと思う。
子供のころにあの絵本を見ることができて、親には感謝している。