本屋さん

私の知り合いにSさんという人がいて、なぜか本屋大賞を嫌っていた。
本人曰く、本屋の店員が選んだ本なんて信用できない、というのである。
Sさんは何冊か推理小説を出版しており、本人は誰も知らないような外国の文学作品を好んで読む
ような人なので、本屋の店員を心からバカにしておったのですな。


私は、いくらなんでもそれは言いすぎだろう、と思っていたのだが、ちょっとSさんの方が
正しいのではないか、という出来事があった。


松山には大手の書店があって、市内の中心部にも郊外にも店舗がある。
基本的にベストセラー本とマンガと雑誌など、あとはDVDやCDを置いており、みすず書房とか
法政大学出版局の本は、買う人がいないからほとんど置いていない。
私も買わないけど。


で、今日、大街道にある本屋に入って、内田樹の「下流志向」を買おうと思った。
私と相性のいい本屋だと、本の配置がすっと頭に入り、この本はだいたいこのへんにあるな、という
勘が働く。腕利きの店員がいるのが分かるのである。


逆に、どういう分類で仕分けしているのかよく分からない本屋は、目的の本を探すのに手間取り、イラ
イラすることが多い。
よくレンタルビデオ屋で、恋愛とかアクションなどのジャンルごとに分類しており、監督の名前で探せ
ないときがあるが、あのイラ立ちに近いものがある。


残念ながら、今日行った本屋は私と相性が悪い方の本屋で、ふだんはあまり買い物をしないのだが、
何となく入ってみたのだった。
やっぱりないな、と判断してそのまま出ればよかったのだが、店内にタッチパネル式の書籍検索装置が
あるので調べてみると、内田樹下流志向」は在庫ありになっている。


紙片をプリントアウトして一階のレジに持って行くと、電話で売り場の人に在庫確認をしてくれた。
「えーと、著者名はうちだ‥‥これ何て読むんだろう?」
「たつる、です」と私。
「あ、内田樹下流志向、在庫ありますでしょうか?」


二階にあるらしいので、上がって確認してもらうと、店員さんが二人がかりで本棚を探している。
「ビジネス」とか「旅行」などのカテゴリーがあるところだ。
10分ぐらい待っていたが、二人とも発見できない。
しょうがないから私も加わって探したら、あっさり自力で見つけられた。


二人の店員さんには申し訳なかったが、なんか分類するジャンルが違ってないか? とも思った。
まあ、あったからよかったんだけど。もちろん買ったですよ。


毎日、膨大な量の本が入荷しているのだから、全部のタイトルや著者名を記憶するのは不可能だろうし、
内田樹がメジャーなのかマイナーなのかは私には判断できない。
しかし、検索装置を置いてある以上は、店員がパッと出せるように日ごろから努力しておくのが正しい
のではなかろうか。


数年前、商品にICタグをつけて、どこにあるかを一発で分かる装置がテレビで紹介されていたが、
あれは本屋には普及しなかったみたいだ。少なくとも松山の本屋にはない。
たぶんタグをつけるのに手間がかかるし、それほどコストをかけられないのだろう。


そうすると、アマゾンなどのインターネット書店は圧倒的優位に立てるわけである。
検索やソートが自在にできて、クリック一発で注文できるのだから。
街の本屋さんがどんどん消滅しているらしいけれど、大衆相手の本屋はアマゾンにはないサービスを
提供しないと生き残れないのかもしれないよ。


本文と写真はまったく関係ありません

州*‘ o‘リ<本は好きです