コロッケあたま

音羽から江戸川橋の方に向かって歩くと、左側に「熊ぼっこ」という定食屋があった。
私はよくそこで昼食をとっていた。


この定食屋のメニューに“カツあたま定食”と書いてあり、(あたまって何?)と、
しばらく怖くて注文できなかった。


ある日、勇気を出して注文してみると、何のことはない、カツ丼を分離させたものに
すぎなかった。
要するに、カツとタマネギの卵とじ+ご飯である。
同様なメニューに“コロッケあたま定食”というのもあった。


私は、このような定食を「熊ぼっこ」以外で見たことがないのだが、他にそういう
ものを出している店があるのだろうか? 
日本は広いから、たぶんあるだろうけど。


さて、私は貧乏なので、コロッケが安いとまとめ買いをしてしまう。
よく三鷹駅南口にある駅ビルの地下の総菜屋で、閉店前に安くなった1個40円の
コロッケを5つばかり買っていた。


一日目はコロッケにソースなんかをかけて食べるのだが、二日目の冷えたコロッケは
なんとも侘しいものがある。電子レンジもなかったので温めることもできない。
そこで、コロッケあたま定食である。


タマネギと少量のニンニクを刻んで片手鍋に入れ、めんつゆで煮込む。もちろん、
本格的に出汁・日本酒・みりん・醤油でもいい。
煮えてきたら、冷えたコロッケを二つばかり放り込んで温める。
このとき、コロッケは煮汁を吸い込むので、出汁の量は少し多めの方がいいかも
しれない。
それからネギと溶き卵を入れて火を止め、余熱で半熟にする。


皿に移すとき、ぐずぐずになったコロッケが崩れないように注意しなければいけないが、
私は面倒なので鍋から直接つついた。下品だが誰も見てないし。


なお、ご飯の上にかけてコロッケ丼にするのは、あまり薦められない。
というのも、コロッケはほぼイモなので、ご飯に乗っけるとくどいような気がするのだ。
私だけかもしれないが。


出汁をたっぷり吸い込んで、とろとろの卵がかかったコロッケを頬張ると、なんともいえず
旨い。貧乏人ならではの料理だが、今でもコロッケが余ると作ってしまう。
酒の肴にもいいかもしれませんよ、奥さん