ゴキブリ

ゴキブリが大嫌いな人は、読まない方がいいです。


あれは小学5年生のときだったろうか。
私たち家族は、2DKのアパートに住んでいた。
6畳の部屋に私と兄の机を置いて、寝るときは押入れから布団を出して敷いていた。
ベッドを置くスペースなどなかった。


季節は夏だった。
当時の私は、家の中でランニングと短パンで過ごしていた。
たぶん、昭和の小学生たちは、全国どこでもそうだったと思う。
残念ながら、我が家にエアコンはなかった。
それでも、寝苦しいと感じたことはあまりなかったのが不思議だ。


ある日のこと、もう寝ようと思って、私は押入れをガラッと開けた。
上下二段になっており、上の段に敷布団やタオルケットなどが入れてあった。
天気のいい日は外に干してからしまっているので、顔を布団に突っ込むと、お日様の
匂いがして幸せな気分になれた。


当時の身長は140cmぐらいだったろうか? 
私は手をいっぱいに伸ばして布団にさしこみ、顔をうずめた。
ちょうど押入れの上下を仕切っている段より、頭ひとつ出るぐらいだったと思う。


しばらく幸せな気分を味わっていると、首筋にゾロリと何かが通った感触があった。
反射的に身体がビクッとなると、そいつは慌てて下に降りようとした。
そのとき、奴は私の首から肩に抜け、胸から腹へ下ると、左足をらせん状に走り、
くるぶしから駆け抜けていった。


一瞬のできごとに、私は悲鳴もあげられなかった。
身体をゴキブリに蹂躙されてしまった驚きと気持ち悪さで、しばらく同じポーズのまま
動けなかった。


その後のことは、よく憶えていない。
「兄ちゃん、ゴキブリが!」
と助けを求めたと思うのだが‥‥


それから時間は過ぎて、昨日のことだ。
夜、テレビを見ていると、黒い何かがブンッと音をたてて飛んできて、壁にへばりついた。
奴だ。


普通なら、奴らはそのまま走って移動するはずだ。
私もそうするだろうと身構えていた。
ところが、昨日の気が狂った奴は、止まっていた壁からさらに飛んだのだ。
もっと正確に言おう。
奴は部屋の中を飛び回りやがったのだ。ありえない。


おそらく、どこかで殺虫剤をかけられてパニックになっていたのだろう。
しばらくすると勢いがなくなったので、ハエ叩きで簡単に殺すことができた。
やれやれ‥‥


ところで、ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」を読んでいると、ロシアにもゴキブリが
いるらしい。あんな寒い国で、果たして越冬できるのだろうか? 北海道にはいないっていうのに。
ロシアのゴキブリと、日本のゴキブリは種類が違うのかもしれない。


最後に、ゴキブリが大量に出る映画を紹介しておしまいにしよう。

クリープショー [DVD]

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オムニバス形式の映画だが、その中のひとつに、ゴキブリがものすごく出てくる話があるので、
怖いもの見たさで興味のある人は是非。