「イラッとする」という言葉

ダウンタウン松本人志が言った「イラッとする」という言葉が、あっという
間に広まった。
彼がこの言葉を作ったかどうかは知らないが、少なくとも最初に使ったのは
事実だと思う。


「ムカつく」と同様に、「イラッとする」もいまの世相の気分を表しており、
このような言葉で表現したい気持ちが、多くの人にあったのだろう。


では、どんな気持ちなのか? 
おそらく、瞬間的に不快な気分になったときに使われると思う。
しかも、その不快感は表面に出ず、蓄積されるはずだ。


なぜなら、よく“瞬間湯沸かし器”と呼ばれる、すぐに怒りを爆発させる
人がいるが、こういう性格だと「イラッ」としたとたんに発散するわけ
だから、言語化する必要がない。


「イラッ」とした気分は、そのまま飲み込まれ、しばらくすると澱のように
たまっていく。もし、同じ人物や場所での「イラッ」が沈殿し、人によって
許容量は異なるだろうが、ある臨界点を超えたとき、怒りが噴火する。


こういうパターンで怒る人が多いから、「イラッとする」という言葉が
前からあったように受け入れられるのだろう。


しかし、日本人は、昔に比べて怒りっぽくなったのだろうか。
寛容さがなくなっていったのかもしれないし、常識が共有されなくなった
からかもしれない。
そのあたりは、よく分からない。


私がイラッとするのは、主に飲食店などのアルバイトに対してである。
マニュアルだけで行動しているから、見たら分かるだろう、という
ことにも、いちいち確認してくる。


あるいは、ブックオフの店員の「いらっしゃいませー、こんにちはー」だ。
あれが心地よいと思っている人がいたら教えてほしい。
たぶん、長時間立ち読みをさせないように、わざと店内を殺伐とした雰囲気に
しているのではないか。


てことは、私に限って言うと、期待したサービスが受けられなかったことに
腹を立てているわけだ。
だから、最初からロクなサービスなどない、と思っていれば、むやみに
イラッとすることもなくなる。


おだやかに過ごすには、心のハードルを下げておくのが一番ということか。
そういう私が、いちばん人をイラッとさせているのかもしれないな。
なにしろ、二十歳を超えてから、友だちに絶交されたことがあるから。