犬を拾った話2

三鷹に着いたのは夜8時半ぐらいだった。
当時、私は猫を飼っており、行きつけの動物病院があったのだが、すでに閉まっている。
しかたがないので、一晩は私が仔犬を預かり、翌朝に動物病院へ連れて行くことになった。
Sは帰り、Rはうちに泊まった。


まだ目も開いていない仔犬を埋めるなんて、いったい誰がやったんだろうか。
それとも、別の動物の仕業か? いまだによく分からない。
ともかく、あのとき私が小便をしなければ、二匹の仔犬たちは死んでいただろう。


冷たかった身体も、タオルでくるみ、使い捨てカイロで温めてやると、体温を取り戻して
きた。一安心だ。
だが、元気になると、今度はミルクを欲しがる。
2時間半おきにキュンキュン鳴くので、あまり眠れなかった。


翌5月5日、Rと二人で武蔵野市にある動物病院へ行った。
親切な獣医さんが、特に異常はない、と診断してくれた。
写真を持ってきてくれたら、里親を募集するビラを貼ってあげるから、持っていらっしゃい
とまで言ってくれたのが嬉しかった。


動物病院から戻ると、Sが嫁さんと一緒にやってきた。
仔犬用の哺乳瓶と粉ミルクを買ってきてくれたのだ。ありがたい。


待ちに待ったミルクを与えると、腹ペコだったのだろう、ものすごい勢いで飲んだ。
そして、濡れたティッシュでうながすと、おしっこもどんどん出した。
やれやれ、これで一山越えたな、とお互い顔を見合わせて笑った。


だが、犬とはいえ、子育ては大変だということを、これから約一週間、身に沁みて
味わうことになる。


とにかく、眠れない。しょっちゅうミルクをやらねばならないし、二匹同時にはあげられ
ないから、一方にやると、もう一方は必死で鳴く。あー、もう、後でやるってばー! と
何度叫んだことか。言ってもわからなかっただろうけど。


足腰がしっかりするようになると、小便を垂れ流しながら這いずり回る。
段ボール箱に入れておくと、中でウンコをして全身クソまみれになっている。
失業中で、一日中ヒマだからこそ何とかなったけど、会社勤めをしていたら、たぶん
保健所へ連れて行っていたと思う。可哀想だけど。


そうそう、写真を撮らなくてはならない。
私はカメラを持ってないので、友達のOくんに頼んだ。
快く引き受けてくれた。ありがとう。
掲載しているのは、そのとき彼が撮ってくれたものである。


さすがに辛かったので、5月10日にS夫婦にしばらく預かってもらうことにした。
Sの嫁さんが犬好きなので、世話をしてみたかったのだそうだ。
渡りに船で引き渡す。
約一週間ぶりに安眠できそうだ。


写真も現像してもらったし、これで里親が早く見つかればいいのだが‥‥


(つづく)