熟睡と死

前から疑問に思うことがある。
熟睡している人間が即死した場合、本人は死を意識するだろうか、ということだ。


例えば、居眠り運転をしていて、反対車線にはみ出したとき、大型トラックと正面衝突
して死亡、というケースが考えられる。
この場合、運転手は自分が眠ったまま死んだはずだ。
彼は、永遠に目覚めない眠りについたのと同じで、苦痛や恐怖は感じないのだろうか。


病気や怪我の場合、人間の意識に『ひょっとしたら死ぬかもしれん』という不安や恐れが
浮かぶだろう。
末期ガンの患者の場合、確実に自分が死ぬことを告知される。
そのときの心理をキューブラー・ロスという医者が検証していた。


だが、熟睡時の即死は、そういう心理を一切生み出さないはずである。
そういえば、「完全自殺マニュアル」に書いてあったと思ったけど、自分の胸に
高圧の電撃を流すようなタイマーをセットして、睡眠薬を飲んで寝る、という
方法があった。
読んだときは、何もこんなややこしいことをしなくても‥‥と思ったものだが、
いまは大変よく分かる。


では、心理的に、全く死を受け入れないまま亡くなるということは、いいことなの
だろうか? 
本人は死を望んでいないのだから、人生が尻切れトンボのまま終わってしまって悔しい
かもしれない。残された人も驚くだろうし。


それでも、死刑を執行される前の恐怖を味わうとか、絶望的な状況下で大怪我をして
衰弱死するとか、そういう死に比べたら、大変ラッキーだと思う。


誰しも、老人になって、眠るような大往生を遂げたいと思うだろうが、そんなに人生は
甘くないはずだ。
私は、たぶんロクな死に方をしないと思うのだが、痛いのは嫌だな。
できれば、「水滸伝」の花和尚魯智深のように、潔く死んでみたいものだ。


ペインクリニックとかいって、痛みを緩和する治療方法があるそうだが、もう一歩
進めて、ペインレスな死を執行してもらいたいものだ。(←安楽死やんか)