自炊

私が自炊を始めたのは、大学生になってからだった。
それまでは、袋ラーメンを作るぐらいで、親が作るものをおとなしく食べるだけだった。
初めてスパゲティを茹でたときなど、一人前の量がわからなくて、一袋全部を鍋に入れて
しまい、膨大な量のスパゲティを前に、必死になって食べたものだった。


そのうち、カレーとか野菜炒めなんかを作れるようになってきた。
料理が面白くなると、どんどんいろんなものを作りたくなるのだろうが、私はこの段階で
止まってしまった。
だから、自炊をしている時期は、だいたい5種類ぐらいのメニューのローテーションで
生活していたと思う。


1.カレー・シチュー・ハンバーグ
2.野菜炒め・回鍋肉・麻婆豆腐・焼きそば・餃子
3.スパゲティ・うどん
4.おでん・肉じゃが
5.お好み焼
(私は魚介類が嫌いなので、和食のレシピがさっぱりである)


こんなもんだろうか? 最初のハンバーグだって、自分でひき肉を買ってきて作るの
ではなく、出来合いのものを焼いていただけだ。
揚げ物は一人前を作るのは不経済なので、スーパーの惣菜で間に合わせていたし。


あと、一人暮らしだと、どうしても鍋物なんかは敬遠してしまう。
ひとりですき焼きを作ったこともあるが、食べているうちに寂しくなって泣きそうに
なった。
ちなみに、モーニング娘。の「すき焼き」は、家族の団欒を謳歌した名曲だと思う。


ここからステップアップして、もっと複雑な料理を作れる人を私は尊敬する。
例えば、キャベツを買ってきても、私は炒めるかお好み焼きにしか使ってないのだが、
ロールキャベツとかコールスローを作れるような人だ。


玉村豊男の名著「料理の四面体」というのがあるが、これを読むと無限に広がる料理と
いう宇宙の中で、自分がいかにちっぽけな範囲でしか調理できてないかが分かる。


本当に料理がうまい人というのは、頭がいいと判断していいのではなかろうか。
自炊して初めて、自分の母親の料理がダメだったことが分かって、複雑な気分になった
ことはナイショだ。