先月の20日に録画していた「スマイル〜ビーチボーイズ幻のアルバム完成」という番組を
ようやく見ることができた。
一言でいうなら、天才のリハビリテーション、だった。
私はビーチボーイズやブライアン・ウィルソンについて語る教養はない。
それでも、ブライアン・ウィルソンの痛々しさを見ると、つい何か言いたくなってしまう。
繊細な、あまりに繊細な人が壊れてしまい、そこから長い年月をかけて復活するのは
ひとつの物語であるが、それをあからさまに見せてしまうのは、いかにもアメリカ的だ。
(もっと、そっとしておいてあげればいいのに‥‥)と思うのは、私が日本人だからだ
ろうか?
長年放置されてきた録音の断片を、ブライアン・ウィルソンの子供の世代のミュージシャン
たちがジグソーパズルのように形作っていく様を、番組はとらえている。
私がさすがだと思ったのは、これまでの音源を全てコンピューターに入れることによって
作業が格段に楽になった、という点だ。
これはテクノロジーの勝利だろう。
だが、全体像は本人にしか分からない。本人すら不明なところもある。
そこで、もうひとつの物語が現れる。
ヴァン・ダイク・パークスとの友情が復活するのだ。
彼の協力を得て、幻のアルバムは完成に近づいていく。
私はロンドン公演での、彼らの抱擁を見て涙ぐんでしまった。
これを見ていたポール・マッカートニーは、ジョン・レノンを思い出しただろうか?
ドラッグの後遺症だろうか、もたついた口調のブライアン・ウィルソンに、かつての
ファルセットの輝きはない。
しかし、ステージで立っているだけでもすごいことなのだろう。
私は、古今亭志ん生を連想してしまった。
師匠は高座にいるだけでいいんですよ、と言われるような存在とでもいうのだろうか。
もはや何を書いているのか自分でも分からなくなってしまった。
おしまい。