- 作者: 小谷野敦
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2016/10/14
- メディア: 新書
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本当は一人ひとりもっと言えることはあるのだろうけど、どんどん人をさばいて
いくために短めの評論になっている。
その、ちぎっては投げちぎっては投げの勢いがすごい。
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とはいうものの、前提をひっくり返すような気がするが、偉人には明快な基準と
いうか定義があるのだろうか。
子供向けの偉人伝が出ていたらそれは偉人なのか、国から勲章などをもらって
いたら偉人なのか、何らかのアカデミーに所属していれば偉人なのか。
この人はまあ偉人だろうという人はある程度いて、それは衆目の一致するところ
だろう。が、グレーゾーンもわりとあるのではないか。
本書のキモとしては、偉人中の偉人の評価をひっくり返すことにあるので、
グレーゾーンの人に難癖をつけることではあるまい。
あと、多くの人が偉人だと思っていて、著者も偉人だと思っている人については
当たり前だが言及されていない。
私が気になるのは吉本隆明である。
彼は偉人なのか、そうでないのか、よく分からない。
本書でも一か所で名前が挙がっていたけれど、世界的には無名なのではないか。
あるいは、黒澤明や手塚治虫は偉人なのかどうか。
私は偉人だと思うのだが、猫猫先生にとっては違うのかもしれない。
できれば、世間がおおむね偉人だと思っている人の中で、猫猫先生自身が
認める人のリストも出してほしかった。
↓
あと、どうでもいいことだが、作家は文豪と呼ばれるけれど、巨匠とはあまり
呼ばれない。
映画監督とか音楽監督のように、大勢の人を束ねる仕事をしている人が巨匠と
呼ばれ、一人で作品を作る人は言葉のニュアンスが違うのだろうか。
でも、画家は巨匠と呼ばれる人もいるような気がする。画伯はこのところ侮蔑の
意味で使われることもあるが、他に呼び方はあるのだろうか。