本当に偉いのか あまのじゃく偉人伝

本当に偉いのか あまのじゃく偉人伝 (新潮新書)

本当に偉いのか あまのじゃく偉人伝 (新潮新書)

久しぶりに猫猫先生らしい新書で、面白かった。
本当は一人ひとりもっと言えることはあるのだろうけど、どんどん人をさばいて
いくために短めの評論になっている。
その、ちぎっては投げちぎっては投げの勢いがすごい。



とはいうものの、前提をひっくり返すような気がするが、偉人には明快な基準と
いうか定義があるのだろうか。
子供向けの偉人伝が出ていたらそれは偉人なのか、国から勲章などをもらって
いたら偉人なのか、何らかのアカデミーに所属していれば偉人なのか。


この人はまあ偉人だろうという人はある程度いて、それは衆目の一致するところ
だろう。が、グレーゾーンもわりとあるのではないか。
本書のキモとしては、偉人中の偉人の評価をひっくり返すことにあるので、
グレーゾーンの人に難癖をつけることではあるまい。


あと、多くの人が偉人だと思っていて、著者も偉人だと思っている人については
当たり前だが言及されていない。


私が気になるのは吉本隆明である。
彼は偉人なのか、そうでないのか、よく分からない。
本書でも一か所で名前が挙がっていたけれど、世界的には無名なのではないか。


あるいは、黒澤明手塚治虫は偉人なのかどうか。
私は偉人だと思うのだが、猫猫先生にとっては違うのかもしれない。


できれば、世間がおおむね偉人だと思っている人の中で、猫猫先生自身が
認める人のリストも出してほしかった。



あと、どうでもいいことだが、作家は文豪と呼ばれるけれど、巨匠とはあまり
呼ばれない。


映画監督とか音楽監督のように、大勢の人を束ねる仕事をしている人が巨匠と
呼ばれ、一人で作品を作る人は言葉のニュアンスが違うのだろうか。


でも、画家は巨匠と呼ばれる人もいるような気がする。画伯はこのところ侮蔑の
意味で使われることもあるが、他に呼び方はあるのだろうか。