- 作者: 山藤章二
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2013/02/21
- メディア: 新書
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友達にもらったチケットで新橋演舞場に行った。何の芝居を見たのか、
もう忘れてしまったが、その休憩時間に喫茶店でお茶を飲んでいたとき、
隣のテーブルに山藤章二が座った。
おお、山藤章二だ! と心の中で叫んだが、どうすることもできず、でも
何かしら訴えるものがあったのか、彼は私の方をちらりと見た。
私はお茶を飲み干して席を立った。
ただそれだけの話だが、東京で見た数少ない有名人なので、よく覚えて
いる。
さて、この「ヘタウマ文化論」だが、あまり期待して読まない方がいい。
75歳のお爺さんの話をのんびり聞く、ぐらいでちょうどいい。
いろいろ脱線するが、親しくしていた立川談志を補助線にして語るところ
が一番おもしろかった。
談志が高座に出てくると観客は緊張する。その一方で、出てくるだけで
なんとなく笑ってしまう落語家もいる。
そういう人を「フラ」があるというのだが、談志はその「フラ」を持つ
芸人に嫉妬していたのではないか、という。
もちろん落語の技術では談志は誰にも負けない自信がある。
では「フラ」とは何なのか。その「フラ」を愛する観客とは何なのか。
そこから「ヘタウマ」につながっていくあたりはうまい。
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最後の方に「文春漫画賞」について書いてある。
新聞に掲載されるような一コママンガの系譜を表彰するものだが、もう
そういう作品がほとんど出てこなくなったので、平成13年になくなった。
これについては、山藤章二が手塚治虫をどう評価していたのか訊いてみたく
なるが、特に何の言及もない。
山藤は、エスプリの効いた大人の漫画がなくなった、と嘆いている。
たしかに新聞や雑誌にはほとんど掲載されなくなった。
やくみつるが頑張っているぐらいだろうか。
だが、そういう諧謔はネット上にいくらでもある。
ほとんどは素人の下らないものだが、ときどき面白いのが現れる。
基本的には匿名なので、作品がまとめられて残ることもない。
そういうことを山藤章二に教えたところで、どうなるわけでもないのだが。
↓
前にも書いたが、山藤章二の似顔絵は一種の型(かた)になっている。
誰か二代目を襲名させて、似顔絵だけでも継承させたらどうだろうか。
このスタイルが失われるのは、あまりにも惜しい。