数学入門

数学入門 (ちくま新書)

数学入門 (ちくま新書)

高校1年で数学が分からなくなり、そのままオッサンになっている。
ただ、数学自体は嫌いではない。数学というより数学者の伝記が好き
なのかもしれない。


本書のまえがきにはこうある。

 たしかに、中学や高校で数学がダメになる人が多い。それはその人の
責任ではない。問題は、教科書の構成の仕方にある。教科書では、具体的
な意味が不明のまま定義を覚えさせる。その上で、ひとつの単元を教わる
とたっぷり練習。そして、次の単元を教わって、またたっぷり練習、そう
いうふうに積み上げられていく。これは、「教育」が持つ裏の目的、つまり、
「向いている人とそうでない人を選り分ける」ためには適切だろう。でも
それは、ごく少数の幸運な人を除く大部分の人に、苦痛と挫折感と嫌悪感
を植え付けてしまう。

そうか、教科書が悪かったのか、と私なんかは安心する。


実際、第一章のピタゴラスの定理からじっくり丁寧に読んでいけば、
三角比やベクトルまでなんとか理解できるようになっている。
この、ぐいぐい進む感じが本書の特長だろう。


しかし、関数から微分積分あたりで私の頭はぼんやりとし始め、
最後の集合まで這々の体でたどり着いても、そこから先はもう
完全に分からない。


ただ、それは本書が悪いのではなく、私の頭が悪いからだ。
きちんと積み重ねて、前にあったことを完全に理解してないから、
後半になるとさっぱり分からなくなるのである。


けれども、分からないなりに面白いということはあって、例えば
なぜ円錐の体積を求めるのに3分の1という数字が出てくるのか、
という理由が170ページに書いてあり、長年の謎が解けた。


数学は、ほとんどの人にとって、どこかで分からなくなるもの
である。早い人は小学生から、遅い人でも高校生で諦める。
幸か不幸か、一度も分からなくなることがない人が、数学を扱う
専門家になれるのだろう。


多くの場合、そういう人は中学生の段階で大学生あたりのレベル
に達しており、数学とはそのような人のためにある学問なので
あろう。