テレビ局削減論

テレビ局削減論 (新潮新書)

テレビ局削減論 (新潮新書)

テレビ番組がつまらなくなり、広告費が集まらなくなり、制作費が
抑えられて、ますますテレビ番組がつまらなくなる、という負の
スパイラルが続いているらしい。


なので、体力の弱った東名阪のキー局を民放3NHK1に再編すれば
いいではないか、というのが本書の主張だ。


だが、どうも説得力がない。
テレビ番組がつまらなくなったのは、制作費が少なくなったから
だけではなく、表現の規制が厳しくなったからでもあるが、その
ことについては触れられていない。


それに、p8 にゴールデンタイム(午後7時から10時)の総世帯
視聴率のグラフが出ていて、2004年から2010年の間に4.4ポイント
低下している、とあるが、これはつまらないからテレビを見て
いないのではなく、仕事が忙しくて帰宅できないから、という
のが真実ではなかろうか。


不況で人手が不足して残業が多くなったり、共働きをしなければ
ならない世帯が増加し、子供は塾に行っている。
つまり、夜の7時から10時はもはやゴールデンなどではなく、
悪意のある言い方をすればDQNタイムなのではないか。


そういう人が喜ぶようなレベルの番組は、あまり面白くないのも
当然だと思う。
現に、スポンサーもパチンコや携帯ゲームがメインで、どの層を
ターゲットにしているかは想像すれば分かる。


もし、お金をかけずにテレビを見てほしいのなら、過去の番組を
カットせずに放送することが一番いいと思う。
昔のビデオを流すだけだから、制作費はゼロだ。
何が望まれているかは、当時の視聴率を参考にしてもいいし、
ネットで何を再放送してほしいかアンケートをとればいい。


そこで浮いた経費を、報道なりドラマなりにつぎ込んで、息の長い
コンテンツを作る。
そうすればテレビは復活とはいかないまでも、まともな状態に戻る
のではないだろうか。



ちょうど1年前の今日、福島第一原発の1号機が水素爆発を起こした。
これを唯一カメラで撮影したのは福島中央テレビだ。
その映像がなければ、我々は政府と東電にしばらく騙されていたかも
しれない。
もし日本にピュリッツァー賞があれば、あの映像が受賞するだろう。


ネットでは、テレビはオワコンなどと揶揄されているようだが、まだ
まだテレビは我々の生活のメインである。
昼間は輪番で放送を休止するぐらいのことをして、少しでも質の高い
番組を作るべきだと思う。