さよなら!僕らのソニー

さよなら!僕らのソニー (文春新書)

さよなら!僕らのソニー (文春新書)

映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の冒頭に、自動エサやり機
が動く場面がでてくる。
米国人は、ああいうピタゴラスイッチ的なからくりが大好きで、ほか
の映画でもそのような装置が出てくるのをいくつも見た。


なので、米国人がものづくりに理解を示さないわけではなく、多くの
人がガレージで日曜大工的なものを楽しんでいるはずである。


だが、英国生まれで米国流の経営をするハワード・ストリンガー氏は
違ったようだ。


初版の帯には「ブランドをダメにしたのは誰だ!」という挑発的な
コピーの下に、出井伸之ハワード・ストリンガーの写真が載って
いる。まるで犯人扱いである。


往年のソニー・ファンにとっては、ソニーはあくまでも手にした人が
ワクワクするような家電製品を創りだすメーカーであった。
トランジスタラジオ、トリニトロンテレビ、ウォークマン、CDなど、
世界初の製品をヒットさせてきたブランドであった。


そのワクワク感は、アップル社にすっかり奪われてしまった。
なぜなら、先端研究部門を潰し、優秀なエンジニアがどんどん流出
しているからだ、という。


では、ものづくりに見切りをつけたソニーはどこへ向かったか。
コンテンツやネットワーク事業である。
本書はこの経営方針に対して、かなり批判的である。


私は、家電という分野で、これ以上革新的な商品が出るのかどうか、
ちょっと疑問なので、ソニーの方針についてそれほど悪い印象はない。


というのも、米国にはエジソンが起業したゼネラル・エレクトリック
があり、そこの家電部門RCAは1987年にフランスの会社に売却され、
現在は重電と金融の巨大企業になっているからである。


日本でいうと、日立や東芝がそういう方向に向かっている。
もしかしたら家電部門をどこかに売却するかもしれない。
だが、ソニーは金融部門では稼いでいるものの、重電部門はない。


だから、ネットワーク分野に投資していこう、というのは分からない
ではないのである。


とはいうものの、ドラえもん的な家電が発明されないかと、密かに
期待してもいる。
そういう発想が出てくるのは、まだ日本からだろうと信じているか
らである。


ソニーはその期待にこたえてくれるだろうか?