大人のままごと

大人のままごと (1979年) (文春文庫)

大人のままごと (1979年) (文春文庫)

去年の2月ごろ、旅行中に読んだ。
荻昌弘は映画解説の人、という記憶しかなかったのだが、実は食に関する
名エッセイストでもあった。
私はそのことを中島梓の本で知った。


今から30年以上前の本なので、内容は当然古い。
1970年代後半の食文化というのはどんな水準だったのか、というのが分かる。


いまと違って、外国の料理の情報がそれほどあるわけではない。
荻昌弘は取材で海外に何度も行っているから、本場の食事を日本人に紹介
するわけである。


あるいは、インスタント食品が出回り始めたころなので、天然ものの良さ
というのも熱く語っている。
雁屋哲荻昌弘の影響を受けているのかもしれない)


そのあたりは、読んでいてギャップを感じるところであるが、最も面白かった
のは、1975年にエリザベス女王が来日したときの話だった。
京都から伊勢まで近鉄で向かうときに、英国の女王様に弁当を食べていただく、
ということになり、日本の料理人が全力を尽くすのである。


好き嫌いを調べ、どのタイミングで出せば良いのかを決め、細心の注意を払っ
て運ぶ様子をレポートしており、いま読んでも十分スリリングで楽しい。


この本は絶版になっているが、アマゾンで調べたら安く買える。
ぜひ復刻してほしい一冊だ。