- 作者: 荻昌弘
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1979/09
- メディア: 文庫
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荻昌弘は映画解説の人、という記憶しかなかったのだが、実は食に関する
名エッセイストでもあった。
私はそのことを中島梓の本で知った。
今から30年以上前の本なので、内容は当然古い。
1970年代後半の食文化というのはどんな水準だったのか、というのが分かる。
いまと違って、外国の料理の情報がそれほどあるわけではない。
荻昌弘は取材で海外に何度も行っているから、本場の食事を日本人に紹介
するわけである。
あるいは、インスタント食品が出回り始めたころなので、天然ものの良さ
というのも熱く語っている。
(雁屋哲は荻昌弘の影響を受けているのかもしれない)
そのあたりは、読んでいてギャップを感じるところであるが、最も面白かった
のは、1975年にエリザベス女王が来日したときの話だった。
京都から伊勢まで近鉄で向かうときに、英国の女王様に弁当を食べていただく、
ということになり、日本の料理人が全力を尽くすのである。
好き嫌いを調べ、どのタイミングで出せば良いのかを決め、細心の注意を払っ
て運ぶ様子をレポートしており、いま読んでも十分スリリングで楽しい。
この本は絶版になっているが、アマゾンで調べたら安く買える。
ぜひ復刻してほしい一冊だ。