警視庁草子

7〜8年前に買ったままずっと読んでいなかったのに手を出した。
実は山田風太郎をちゃんと読むのは初めてである。


物語は、西郷隆盛が下野し、西南戦争が勃発するまでの間に、東京で
起こった事件を連作形式で描いている。
事件を捜査する側には新政府の警視庁大警視である川路利良がおり、
その事件に巻き込まれ、新政府をからかい、時には事件を解決する側
に、元江戸南町奉行の駒井信興がいる。


これは明治維新の裏側を見つめた佳作であり、司馬遼太郎の「翔ぶが
如く」と同時に読んだら面白いと思う。


この物語の最後の方で、川路と駒井が対面し会話をするところがある。
ここで瓦解した江戸幕府の精神を引きずる駒井はこう語る。

「日本は西洋のために変らせられた。まあ、むりむたいに女にさせられた
娘のようなものじゃ。が、そこで急に手のつけられるあばずれになろうと
しておる-----と、いうのがわしの見解でもある。ふおっ、ふおっ」

まるで岸田秀の開国強姦説そのものである。
いや、初出の年を見ると、この小説の方が早いのだけれど。


私が面白かったのは、本筋ではなく外伝的に語られた「吉五郎流恨録」と
「妖恋高橋お伝」だった。
前者は、三宅島に島送りになった中年のスリが、懐に隠し持っていた春画
を使うことで生き延びる、という話で、日本人は江戸時代から二次元が好
きなのだなぁ、と感心したのだ。


ここからは余談になるけれど、人間はいったい何を使ってオナニーをして
きたのだろうか? 江戸時代の庶民のように、春画を使っていた民族とい
うのは、他にもいたのだろうか? 


西洋人は、エロ小説とかエロ話で興奮していたような気がするが、絵はど
うだったのか。そういうのが流通していたとしたら、ぜひ見てみたい。


そして、もし日本人が突出して二次元のエロ画が好きだとしたら、それは
いったいどうしてなのか、偉い学者さんに教えてもらいたい。