Dear Doctor

西川美和監督の「Dear Doctor」を見てきた。
松山では上映しないと思っていたら、昨日までの約一週間だけ公開
するという。
確かに面白い映画だったけれど、いろんな人が褒めていたから期待
値が大きかった分だけ、ちょっとがっかりした。


というのも、笑福亭鶴瓶がどうしてニセ医者になったか、というい
きさつが、ほとんど語られていなかったからだ。
すでに呆けている父親が医者で、医薬品メーカーの営業マンだった
という過去は刑事が調べて明らかになるのだが、どういうきっかけ
で無医村で働くようになったか、本人の心理は省略されている。
ここが物足りなかった。


それから、香川照之が演じる医薬品の営業マンが、刑事と喫茶店
話すシーンで、わざと椅子から転げ落ちて、刑事が手を差し出すの
を見て
「これも愛ですか?」
と言うところも、なんかうまくできすぎていたような気がする。
非常に深い話を分かりやすく表現した見事な場面なのだけれど、一
介の医薬品プロパーがそんなセリフを言うかなぁ、と思って。


と、ここまでは映画の感想なのだが、以下は私の独り言である。


この映画は無免許の医師が山奥の村人の支えになっていた、という
話だった。
実は、他人から「先生」と呼ばれる職業のなかで、無免許でもいい
ものがある。
塾講師だ。


学校の教師は教員免許を持っていなくてはならない。
ところが、塾講師は何の資格がなくても子供を教えることができる。
教員免許を持っていないことを保護者に伝えても、ちゃんと子供の
成績を上げてやれば文句は言われない。
むしろ、学校の教師の悪口を聞かされることもある。


なぜこういうことになっているかというと、医者と違って教師は命
にかかわるようなクリティカルな状況に、ほとんど出会わないから
だ。


本当は学力と進学先は、人生の中で割と大きなものだと思うのだが、
直ちに死んだりすることはないので、無免許教師でも捕まらずに済
んでいる。


免許の有無は、特殊な技術を習得しているかどうか、ということだ
が、子供を教えることはどうやらグレーゾーンに入るらしい。
そうすると、学校の教師というのは何なんだろう、と思う。


政府が免許の正当性を保証するならば、ニセ医者を取り締まるごと
く、ニセ教師に授業をさせなければよい。
しかし、実情はほったらかしだ。
違いは、学校で教えられるかどうか、ということにすぎない。


授業の技術的な面でいえば、学校の教師にも塾の講師にも、それぞ
れ上手な人がいるだろう。
だとしたら、無免許の講師で授業がうまい人が学校で教えられるよ
うなシステムにすればいいんじゃないかと思う。


問題は、公立学校の場合は、文科省の言う通りに教えなければなら
ないという縛りだ。それから授業以外の雑用の多さ。
せっかく免許を持っている人の能力を阻害しているのではないかと
思う。


なんか民主党の改革案だと、教員免許を取得するには、大学院で2
年勉強しなければならなくなるそうだ。
そんなことをするよりも、普通のサラリーマンなどの社会経験を積
んだ方が、よほどためになると思うのだがなぁ。