- 作者: 譚ろ美
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/09/01
- メディア: 新書
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中学生に歴史を教えているとき、必ず阿片戦争について触れなければ
ならない。教科書では、イギリスと清が戦って敗北する、という記述
があって、なぜ負けたかといえば、イギリスには近代兵器があり、清
にはなかったから、という説明がなされる。
しかし、実際はそうではなかったらしい。
この本によると、清が負けたのは官僚の無能のせいであった。
実際、林則徐が罷免されるまでは、イギリス海軍は苦戦していたので
ある。
道光帝が陪臣にそそのかされなければ、あるいは中国の近代史は変わ
っていたかもしれない。
人事というのは、一国の命運を左右することもあるのだ。
中国にあれほど阿片が蔓延したのに、どうして同じ時期の日本には阿
片が持ち込まれなかったか、という疑問には、次のように答えている。
ひとつには、日本人が勤勉で貧乏だったので、阿片を吸うような余裕
がなかったから、というもの。
もうひとつは、日米修好通商条約のなかで、米国が進んで阿片の禁輸
を条項に入れたことである。
これは何も米国がいい国だったからではなく、イギリスを牽制するた
めに、とにかく日本を自国の補給基地にしたかったからのようだ。
加えて、イギリスはアロー号事件や露土戦争で海軍を動かせなかった。
このような幸運が重なって、日本は阿片の害毒を免れたということだ。
それから140年ぐらい経った今だと、逆に阿片は日本で大流行すると
思う。若者はまじめさを失い享楽的に生きるようになった。
そうなると、日本のお金を狙って、世界中の麻薬業者が売り込んでく
るに違いない。現にいま麻薬は大量に広まっているはずだ。
阿片というと、私は「once upon a time in America」という映画を
思い出す。怪しげな阿片窟で、ロバート・デニーロが阿片を吸いなが
ら昔のことを思い出すシーンから始まる。
そういえば、米国も麻薬漬けになっているが、どこからも侵略されて
はいない。中国はつくづく運が悪かったとしか言いようがない。