FLIP・FLAP

FLIP-FLAP (アフタヌーンKC)

FLIP-FLAP (アフタヌーンKC)

ピンボールのマンガである。
以前「レモンピープル」に同じようなタイトルのマンガがあったような気がするが、
思い出さなかったことにしよう。


ピンボールといえば村上春樹の「1973年のピンボール」である。
大昔に読んだきり、一度も読み返していないので細部は全く記憶していないが、ひ
とつだけ印象に残っている場面がある。


どこかのバーかどこかに置いてあるピンボールを点検に来るのだが、その点検する
人が異常にピンボールが上手いのだ。
ただし、彼はピンボールに対して全く愛情がない。
仕事として淡々と遊ぶ機械を点検しているのである。


ピンボールを愛している人は、その人のことを呆然と見ているだけなのだが、私も
読みながら、妙に悔しい思いをした。べつにピンボールを愛しているわけでもなく、
遊んだこともほとんどないのに。


「FLIP・FLAP」は、それとは全く逆の、ピンボールを愛した女の子と、その女の子を
好きになった男の子の物語だ。
やがて男の子は女の子よりもピンボールに夢中になっていく。


ゲームに意味なんかあるのか? 作者はあると答えている。
それは、恋をすることに意味があるのか、と問うのと同じことなのだろう。
なかなか素敵な作品だと思う。


ひとつ気になったことがあって、ヒロインの女の子の口元がふるえている線で描かれ
ているのはどうしてだろう。
たぶん、主人公の男の子から見て、あいまいな表情をしていて、何を考えているのか
わからないからかな、と推理する。


ただし、彼女はピンボールに夢中になっているときは、しっかりとした口元になって
いる。このあたりの造形が面白かったです。