日本の行く道

日本の行く道 (集英社新書 423C)

日本の行く道 (集英社新書 423C)

橋本治は、なかなかシンプルな提案をしている。
今の状況では地球が持たないのが分かっているのだから、1960年代前半に戻ればいいではないか、
という。


本当ならば、産業革命が原因なのだから、それ以前に戻せばいいだろうが、それではあまりにも
リアリティがなさすぎるので、妥協して1960年代前半にしたそうだ。
この時代だと、自動車も飛行機もコンピューターもあるので、今よりもそれほど困らないだろう、
という判断だ。


さらに言うならば、当時は高層ビルがなかったので、それらを全て取り壊す。
取り壊すにも技術やお金が必要だから、これは立派な仕事になるし、大都市への仕事や人口の集
中を緩和できる。
大都市にいる人は、オフィスやマンションが激減するのだから、地方へ移住せざるを得ないから
だ。


書いている本人も、めちゃくちゃな話だ、と言っているように、これが実現することは限りなく
ゼロに近い。
正直、私もインターネットの便利さを捨ててしまえないだろうと思う。


ただ、産業革命的なものが行き詰まりになってきたな、というのは実に正しくて、これを何とか
しないと人類の未来はないな、とも考える。


産業革命以前は、必要なものを必要なだけ作っていればそれでよかった。
ところが、大量生産が可能になったので、必要でないものを大量に作って、それから売る相手を
考える、という倒錯したことになっていったのだ。


これに成功すれば、生産手段を持った少数の人が大金持ちになれる。
ただそれだけのために、多くの人や資源が犠牲にならなければならないのは、どっかおかしくな
いか? という話だ。


私が一番分からないのは、大金を投資/投機しているファンドである。
彼らは何のためにお金を増やしているのか。
こうしたお金は、一日に1兆ドルも動いているという。


1兆ドルといえば、現在のレートでざっと110兆円だ。
110兆円、と簡単に書いてしまうが、これはどのくらいの金額か。


仮に、1秒間に一万円札を2枚数えられるとしよう。
1分で120万円、1時間で7200万円、1日で17億2800万円、1年で6307億2000万円、10年で6兆3072
億円、100年で63兆720億円である。
つまり、ぶっ通しで約174年ほど一万円札を数え続けてようやく終わる数が110兆円ということにな
る。


これが一日で動いている、というのは、もはや尋常な取引ではない。
どこかでスローダウンさせなければ、絶対にクラッシュするはずだ。


中学生は公民で資本主義の拡大再生産、という概念を学ぶ。
前の年よりも生産を増やすために、儲けの一部を設備投資する、ということだ。
あくまで理論の話だから、世の中の会社がみんな拡大再生産をしているわけではないが、基本的
には前年よりも儲けようとしているのは確かだ。


一方で地球は有限である。
有限の資源を使って、無限の競争をすることはできないと思うが、数学ではどうなんだろうか? 
もはや投機マネーは高等数学なしではやっていけないと思うが、素人から見ると、危険なことをや
っているように見える。


何のために1日1兆ドルも動かして金儲けをしているのか。
誰か教えてほしい。