
- 作者: あまんきみこ,上野紀子
- 出版社/メーカー: あかね書房
- 発売日: 1982/08/01
- メディア: 単行本
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お話が載っている。
「かげおくり」とは、地面に伸びる黒い影を見つめてからパッと空を見ると、ちょうどストロボを
焚いたときのように残像が映るのを眺める、昔の遊びである。
ちいちゃんはお父さんとお母さんとお兄さんの4人で、かげおくりの遊びをやって楽しんでいた。
だが、戦争が激しくなり、ちいちゃんのお父さんは出征してしまう。
さらに空襲が始まり、逃げる途中でちいちゃんはお母さんとお兄さんとはぐれ、ひとりぼっちに
なってしまう。
お腹がすいて寂しくなったちいちゃんは、かげおくりをして遊んでいると、空にお父さんとお母
さんとお兄さんの影が見えた。
ちいちゃんはうれしくなって、みんながいる影の方へすうっと昇っていってしまった。
何十年も後に、ちいちゃんがかげおくりをした場所は公園になっている、という物語である。
最初に見たときは、これを小学3年生に読ませるのか、とびっくりした。
アニメ「火垂るの墓」のように、ちょっとしたトラウマになるのではなかろうか、と思った。
あまんきみこといえば、私にとってはタクシー運転手の松井さんが活躍する「白いぼうし」である。
これも光村図書の小学4年生の教科書に載っている名作だ。
もう30年近く前に読んだが、今でも忘れられないほのぼのとしたお話だった。挿絵もよかったし。
しかし、今の小学生は「白いぼうし」の前に「ちいちゃんのかげおくり」を読むのである。
なんでこんな哀しいストーリーを教科書に載せなければならないのか。
いくら戦争がいけないということを伝えなければならないとはいえ、子供が親とはぐれて死ぬ話
を朗読させるのは辛い。
全国で光村の教科書はどのくらいのシェアを占めているのか分からないが、「ちいちゃんのかげ
おくり」を読んだ子供たちは、どんな大人になっているのか知りたいと思う。
ほとんどの人は、あまり憶えていないかもしれないが。