鬼太郎が見た玉砕


私は数回ほど水木しげるに会ったことがある。
編集者として先輩に連れて行ってもらい、これがあの水木しげるかぁ! と心臓をバクバクさせた
ものだ。


本人は実に飄々とした気さくな人で、私のようなペーペーにもきちんと対応してくれた。
応接間には、ニューブリテン島でもらったのであろうか、巨大な仮面が飾ってあり、本気で南の島
に移住しようとしたんだっけなぁ、と思いながら眺めた。


今回、NHKが制作したドラマは、香川照之水木しげる役になり、自分のマンガと実際の体験をオー
バーラップさせる、という手法になっている。ときどきマンガから鬼太郎やネズミ男が出てきて喋
ったりするのが面白い。


香川照之の演技の上手さは、すでに定評があるので重ねて言うことではないが、水木しげるの雰囲
気を見事に演じていた。よく見ると決して似ているわけではないのだが、あのぼんやりした感じは、
まさに水木しげるなのだ。


右翼とか左翼のようなイデオロギーではなく、実際に激戦地で死にそうになり、左手を失った人の
言うことには説得力がある。
戦争は腹が減るからやってはいかんのです、という言葉を、私はしっかりと記憶したいと思う。


それにしても、ドラマの中の軍人の上層部たちは、気が狂っていたとしか思えない。
生き残った者は、せめて長生きして当時の狂気を伝える義務がある、というラストシーンにはジー
ンときた。塩見三省の熱演も光る。あのビンタは本気でやっていたそうだ。


もはや領土を奪い合って、人と人が殺しあう19世紀型の戦争は葬り去るべきであるが、依然として
アフリカ大陸ではそうした資源争奪戦争が行われている。
資源を持っていても、貿易をしないことには金にはならないのに。バカらしいことだ。
ネズミ男なら「フハッ」と鼻で嗤うだろう。


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