カジノ・ロワイヤル

ピーター・セラーズウディ・アレンが出演していたコメディ作品ではなく、マジな007シリーズを
見てきた。ボリュームたっぷりで、お正月に見るにはいいんじゃないでしょうか。


007シリーズといえば意外と好きな人が多くて、日本だと橋本治内田樹がそうだし、外国だとあの
フェデリコ・フェリーニ監督が大好きだったそうで、ブライアン・ウィルソンもアルバム“ペット
サウンズ”のタイトル曲を本気で映画に使ってほしくて、テープを映画会社に送ったなんていう
エピソードもある。


初代プロデューサーのアルバート・ブロッコリは、007シリーズの脚本は中学生でも理解できるような
ものでなければならない、と言ってたそうで、確かに秘密道具やミサイルが出るクルマ、それにグラ
マラスな美女が出てくるんだから、中学生の夢みたいなものかもしれない。


現に、私が塾講師だったとき、中2の少年が007に興味があると言ったので、「ドクターノオ」から
リビング・デイライツ」までのビデオを連続して貸したことがあった。
勉強のできる子だったので、英語のリスニングにもなるよ、と親には言っていたらしいが、他にも
目的はあったに違いない。


さて、今回の「カジノ・ロワイヤル」は主演にダニエル・クレイグを抜擢して、設定上は全く新しい
1968年生まれのジェームズ・ボンドとなっているそうだ。
私は、ショーン・コネリージェームズ・ボンド原理主義者なので、ダニエル・クレイグはいま一つ
イメージと違う。顔にもう少し甘さが欲しかったところだ。


【ここからネタバレあります】


この作品では、冒頭にボンドが00(ダブルオー)に昇進し、かなり暴力的なことも厭わない若き日を
描いている。
つまり、スパイ稼業に慣れてくると、もっと洗練されてきて、往年のショーン・コネリーのような
男の色気が出てくるのだが、この「カジノ・ロワイヤル」はもっと生々しいのである。


ロジャー・ムーアが主演になってからだろうか、007シリーズが妙にアメリカン・テイストになって
しまい、大味というか派手というか、あまり面白くないものになってしまった。
この傾向はティモシー・ダルトンピアース・ブロスナンの代になっても続いていて、核兵器とか
細菌などの大げさなものと闘っていた。


ところが今回は、ぐっと渋くヨーロピアン・テイストに戻っているのがうれしかった。
まずオープニングの映像(カジノだけに、トランプの絵札を使ったアニメーション)がスタイリッシュに
なっていて格好いい。
ウガンダで爆弾を持った男を追いかけるシーンは、スーパーマリオみたいになっていて、こりゃつまん
ないかなぁ、と思ったが、バハマから持ち直した。
カーチェイスも、Qの新兵器もないし、己の肉体だけを頼りに闘っている感じがする。


何より、敵がテロリストの資金を投機して増やす奴、という地味だけど本当にいそうな人間なのが
よかった。
その、ル・シッフル(英語にするとザ・ナンバー)という名前の敵と、国家予算をバックにポーカーを
するのが一番の見所である。


一回の掛け金が何十万ドルの博打である。
これで勝負して、ル・シッフルをすってんてんにしてやろうというのが007の任務だ。
元手は英国財務省からだが、無尽蔵に出るわけではない。
ちゃんとお目付け役の美人官僚ヴェスパーがついてくる。


このヴェスパーとボンドは恋に落ちるのだが、過去の007シリーズでは、ジェームズ・ボンドと恋仲になる
ことは、死亡フラグが立つことに等しい。(ボンドガールは一発ヤッたらポイ捨て)
このあたりの女の扱いが、いかにもイアン・フレミングらしい気がするが、「ゴールデン・アイ」から
上司Mを女にしたことでバランスをとっているのかも。


関係ないが、ヴェスパーを演じたエヴァ・グリーンは、笑うと目じりが下がってモーニング娘。の久住
小春に似ている。彼女の顔はフランス顔というか、非常にコケティッシュなところがある。


で、相手に毒を盛られて死にそうになったりするのだが、ポーカーの大勝負でボンドは勝ち、ル・シッ
フルは破産する。
その後、彼はCIAに捕まるはずなのだが、逆にボンドとヴェスパーを誘拐して、勝った金を奪い返そう
とするのだった。


拷問を受け、キンタマを潰されそうになるのだが、九死に一生を得て助かり、ヴェスパーとラブラブに
なる。本来なら、ここでおしまいのはずなのだが、もう一度どんでん返しが待っている。
お腹一杯でデザートを食べたあとに、肉料理が一品追加されたような感じ。


ここでボンドは、女なんか一生信じるかよ! というほど深い傷を心に負う。
その後のボンドが、女をモノのように扱う根拠になるのだろう。
幸か不幸か、彼はモテるから女をモノ扱いするわけで、もし同じようなトラウマを持ったモテない男だと、
アキバ系になってしまうと思う。
いや、アキバ系のスパイがいても面白いんだけどw


ま、いくらジェームズ・ボンドが活躍しようとも、別に世界は平和にならないし、アジア・アフリカの
破綻国家で暮らす人はなくならない。
これは娯楽作品だから、そういうことを言ってもしょうがないんだけど、英国人って19世紀から20世紀
前半までに世界をメチャクチャにしておいて、なお上から目線なのは何でだろう、と思う。
戦争に負けてないからでしょうか? 


ジョン・クリーズが出演してないのが物足りなかったけれど、原点に戻った良作ではないかと思います。
それにしても、あのポーカーのルールはよく分からなかったなぁ‥‥


本文と写真はまったく関係ありません

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