パーフェクト・ワールド

パーフェクト ワールド [DVD]

パーフェクト ワールド [DVD]

クリント・イーストウッドケビン・コスナーの顔合わせで話題だった映画だけど、公開時は
見逃していた。BS2でやっていたので、なんとなく最後まで見てしまった。


舞台は1963年のテキサス州で、ちょうどハロウィンの時期だ。
二人組の脱獄囚が、とある家庭に押し入り8歳の男の子を人質にとって逃げる。
途中で脱獄囚は仲間割れをしてしまい、残ったケビン・コスナーと男の子が逃避行を続ける。
それを追う州警察のチーフがクリント・イーストウッドである。
やがてケビン・コスナーは追い詰められてしまい‥‥というストーリーだ。


まず、時代設定が渋い。
ちょうどケネディ大統領が暗殺される直前で、しかも場所はテキサス州である。
ピンポイントでこの時間と場所を決めた理由は、映画のタイトルである「完全な世界」=米国の
黄金期の終焉を意味していると思う。


ケビン・コスナーは、男の子にアラスカの絵葉書を渡そうとしてポケットから取り出す。
ところが、それを銃を出す動作と勘違いした警察によって狙撃されてしまう。
この悲劇的な死が、J.F.ケネディと重ね合わせられているのではないか、というベタな解釈である。


それから、fatherhood (父的なもの)をめぐる物語という見方もできる。
ケビン・コスナーも人質になった男の子も、ともに父親の顔を知らずに育っている。
そんな二人が奇妙な信頼関係を築いていく姿を、温かい視線で描いている。


人質になったとき、男の子はパジャマの上着を着ただけの姿だった。下半身はブリーフ一丁である。
これは性的に無防備な状態を意味する。現に、男の子はもうひとりの脱獄囚に襲われそうになる。
彼に新しいジーンズを買ってやるのがケビン・コスナーで、擬似的な親子関係を明示している。


男の子は、自分のペニスが小さいのではないか、という劣等感を持っており、ケビン・コスナー
打ち明けるのだが、そんなことはない、と否定してくれる。
こういう父的なものを伝えるやりとりが、イーストウッド監督作品の通奏低音のような気がする。


もうひとつ、子供の虐待についても厳しい視線を向けている。
ケビン・コスナーが演じる脱獄囚は、わけのわからないキャラクターで、行き当たりばったりに
行動しているように見える。
ところが、彼は子供が叱られたり殴られたりすることに、ひどく敏感である。


この奇妙な正義感は、見ている者を落ち着かなくさせる。
なぜ大人には平気で銃を向けるくせに、子供を守ろうとするのか。
父親に愛されなかった男が、懸命に父親っぽく振舞おうとする姿を見ると、とても痛々しい。


それにしても、米国人は子供が嫌いなのだろうか? 
子供向けの作品以外だと、たいてい大人の足手まといになる存在として描かれており、無条件に
愛しいものとして登場することはあまりない。


ベビーシッターというアルバイトが成立しているのも米国だけなのではあるまいか? 
もともとは英国の上流階級のナニーをモデルにしているそうだが、米国のベビーシッティングは
まったく違うものだろう。
どうも、米国には子供嫌いの文化があるような気がするのだが‥‥


パーフェクト・ワールド」を見て、同じような映画って何かなぁ、と考えたら「ペーパームーン
が出てきた。あと、ジョン・カサベテス監督の「グロリア」とか。
バディ・ムービーでも、相棒が子供というのは意外と少ないのかな。


本文と写真はまったく関係ありません

从*・ 。.・)<ちっちゃい子は大好きなの