ユナイテッド93

毎月1日は映画の日、ということで見てきた。
昔は1000円で見られるので、朝から5本ぐらいハシゴしたことがあったけど、立て続けに見ると
印象がごっちゃになってしまうので困った。


この映画は、2001年9月11日に発生した同時多発テロでハイジャックされた4機の民間機のうちの
ひとつが、どのように最後を迎えたかを離陸から墜落寸前まで描いた作品である。


乗客は無名の俳優を使いドキュメンタリーのような雰囲気になっている。
航空管制官などの一部は、本人が出演しているので臨場感たっぷりだ。


こう言っては語弊があるが、非常にスリリングだった。
まだワールドトレードセンターに飛行機が突っ込む前の段階で小さな異変に気づくものの、
誰も事件の全体像を把握できないままテロが決行されていく様子が、テンポよく描かれる。


米国の映画でしびれるところは、リーダーシップを発揮する人物がちゃんと出てくるところだ。
例えば、「アポロ13」のフライトディレクター役だったエド・ハリスのような、複雑な組織を
運営していく能力のある人が描かれると、思わず、格好いい、と心の中で叫んでしまう。


ユナイテッド93」でも、軍や航空管制官はおろか、ハイジャックされた乗客の中にも、その
ような人物が出現する。
この頼もしさが、米国のソフトパワーの源なのかもしれない。


一方で、テロリストはどうか。
冒頭にアッラーの神に祈りを捧げ、ハイジャックする前に不安になる様子が描かれているが、
いざ、飛行機を乗っ取ると、わけのわからない言葉を喋るキチガイみたいに(つまり米国人
の視線で)なっていたのが残念だ。
ただひとり、操縦桿を握る役の男だけがインテリ風で、最後まで決行をためらうような役に
見えた。
これらの人物像は、あくまでも後から調査した資料に基づいているのだから、映画のキャラ
クターは想像上のものであることを考慮しておかねばならないけど。


もし、私がハイジャックされた飛行機に乗り合わせていたとしたら、どうだったろうか? 
恐らく、墜落するまで何の抵抗もできなかっただろう。
こういうときに、人間のサバイバル能力が出るんだろうな。


気になったのが、飛行機の中にある電話である。
座席にいくつかビルトインされているのだが、あれは非常用なのだろうか? 
まったくどうでもいいことだが、地上と通話したときの電話料金はどうなっているのだろう? 
確か、飛行機から電話するとき、クレジットカードを使って決済できるはずで、一分数百円
だったと思うのだが。


映画は、航空管制や軍が混乱したままで、テロに対する素早い対応が何もできなかったことを
示唆して終わる。
こういうアンチクライマックスの映画は、米国ではあまりヒットしないと思うのだが、どの
くらい興行収入があったのだろうか。


蛇足だが、テロリスト役を演じたアラブ系の人々が、ハリウッドに魂を売った裏切り者として
狙われないか心配になった。