街場のアメリカ論

街場のアメリカ論 NTT出版ライブラリーレゾナント017

街場のアメリカ論 NTT出版ライブラリーレゾナント017

前から疑問に思っていたことが、快刀乱麻を断つごとく書かれており、読んでいて痛快だ。
例えば、靖国問題

ほんらい小泉首相靖国神社参拝にはまずブッシュ大統領が抗議の声をあげてしかるべき
である。30万米兵戦士者に対する責任を問われて処刑された東京裁判の被告たちを祀った
靖国神社へ同盟国日本の総理大臣が公式参拝することになぜアメリカは抗議しないのか?
(中略)それは靖国参拝アメリカの国益にかなっているからという以外に理由を見いだ
すことはむずかしい。
日中韓の接近を阻止する」というのがアメリカの極東戦略の要諦である。

とある。なるほど。

第三章でアメリカン・コミックを論じた部分は

以下は私の暴走的思弁ですが、私の見るところ、アメコミのスーパーヒーロー物語は、
ある設定を共有しています。それは「理解されない」ということです。
主人公は例外なく特殊な能力を持つ白人男性です。ところが、(中略)そのスーパーな
本性を見せることを禁じられ、市民的な偽装生活を送ることを余儀なくされています。
彼らはこの二面性の乖離に苦しんでいる。これが第一の条件。
スーパーヒーローとして活躍するのだけれど、どういうわけか必ず誤解されて、メディア
からバッシングを受ける。これが第二の条件。
必ずそうなんです。ヒーローは必死になって頑張っているんだけれど、(中略)いわれ
なき非難さえ受けるようになる。そう言われてヒーローががっくりするという場面が
必ずあります。必ず、ある。(中略)
これは国際社会の中でのアメリカ人のセルフ・イメージなんじゃないかなと私は思って
います。

一方で、日本のマンガのヒーローが象徴するもの、という分析もあるが、これは読んでの
お楽しみ。


第六章の子供嫌いの文化には

アメリカの映画や漫画やテレビドラマを見て、そこでの子供の描かれ方がどうも「かわい
くない」と感じるのは私だけでしょうか。ものすごくかわいい子供が出てきて、胸がきゅ
んと詰まって、触れたい、抱きしめたい、保護したい‥‥といった感情を無条件に発露
させるような子供の描き方を私は見たことがないのです。アメリカの物語で描かれてい
る子供は、みんな生意気で、どちらかというと邪悪なのです。これは私ひとりの偏見と
は思われません。

とある。これはちょっと疑問だ。
シャーリー・テンプルテイタム・オニールが主演した女の子の映画は、やはり例外なの
だろうか? 


第七章のシリアルキラーの話も面白いのだが、引用ばっかりになってしまうので、ぜひ
買って読んでみてほしい。
連続殺人の8割は、アメリカで発生してるんだそうだ。びっくり。