
- 作者: 佐藤賢一
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2003/11/14
- メディア: 新書
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私は受験で世界史を選択したにも係わらず、歴史について無知である。
最近、日本史にようやく興味が出てきて、とりあえず司馬遼太郎を読んだりしている
くらいなので、歴史好きな方は「バカじゃないの?」と思われるだろう。
百年戦争についても(あー、なんか教科書に書いてあったなぁ)という知識しか
なかった。100年間もずっと戦争してたのか、と。
そもそも、根本的な誤解があった。
中世のヨーロッパでは、まだ英国・フランスという国民国家の意識が芽生えて
いなかったのである。
だから、百年戦争は、厳密にいうと英国とフランスの戦争ではない。
フランス人領主とフランス国王の争いだったのである。
えっ、イギリスはイギリスじゃん、という人もいるかもしれない。
しかし、当時のイングランドはフランス人の領土だったのである。
だから領主はフランス語しか話さなかった。
(英語にフランス語からの流入がたくさんあるのは、このためだ)
その後の相続争いのもつれから、フランスから追い出された領主が、だんだんと
土着化して、大ブリテン島を中心とした英国という国民国家を形作っていった。
その意識を形作るきっかけになったのが、英仏百年戦争である、というのがこの本の
趣旨である。
リチャードだのシャルルだの、同じような名前がたくさん出てきてややこしいのだが、
巻末付録の系図を見ながら読むとよくわかる。
日本の平安時代末期から室町時代にかけて、ヨーロッパではこんなことがあったんだ
なぁ、と想像すると楽しい。
(ちなみに、日本で国民国家としての意識が芽生えたのは江戸末期だ)
ジャンヌ・ダルクが伝説化されたのは、ナポレオンの時代だったというのも興味深い
話である。
未読の方はぜひ。