英仏百年戦争

英仏百年戦争 (集英社新書)

英仏百年戦争 (集英社新書)


私は受験で世界史を選択したにも係わらず、歴史について無知である。
最近、日本史にようやく興味が出てきて、とりあえず司馬遼太郎を読んだりしている
くらいなので、歴史好きな方は「バカじゃないの?」と思われるだろう。


百年戦争についても(あー、なんか教科書に書いてあったなぁ)という知識しか
なかった。100年間もずっと戦争してたのか、と。


そもそも、根本的な誤解があった。
中世のヨーロッパでは、まだ英国・フランスという国民国家の意識が芽生えて
いなかったのである。
だから、百年戦争は、厳密にいうと英国とフランスの戦争ではない。
フランス人領主とフランス国王の争いだったのである。


えっ、イギリスはイギリスじゃん、という人もいるかもしれない。
しかし、当時のイングランドはフランス人の領土だったのである。
だから領主はフランス語しか話さなかった。
(英語にフランス語からの流入がたくさんあるのは、このためだ)

その後の相続争いのもつれから、フランスから追い出された領主が、だんだんと
土着化して、大ブリテン島を中心とした英国という国民国家を形作っていった。


その意識を形作るきっかけになったのが、英仏百年戦争である、というのがこの本の
趣旨である。


リチャードだのシャルルだの、同じような名前がたくさん出てきてややこしいのだが、
巻末付録の系図を見ながら読むとよくわかる。
日本の平安時代末期から室町時代にかけて、ヨーロッパではこんなことがあったんだ
なぁ、と想像すると楽しい。
(ちなみに、日本で国民国家としての意識が芽生えたのは江戸末期だ)


ジャンヌ・ダルクが伝説化されたのは、ナポレオンの時代だったというのも興味深い
話である。
未読の方はぜひ。