この時期になると、宅配便の仕分けのバイトをしたのを思い出す。
確か、夜8時から朝6時までだったと思う。
毎晩、三田駅から送迎バスが出て、それに乗って有明の集配センターへ運ばれるのだ。
バイトも荷物扱いか。
集配センターには、トラックがやってきて、都内で集めた荷物を次々と降ろしていく。
我々がそれを仕分けして、全国各地へ向かうトラックに載せていく。
これだけの作業だが、普通のダンボール箱の荷物は、ほとんど機械が選別していて人手は
かからない。
やっかいなのは冷凍ものと割れ物だ。
冷凍ものは、巨大な冷凍庫ごとトラックから出して、二階の冷凍用仕分け室へ上げる。
それから中身を出して、各道府県ごとに分けて、再び冷凍庫に詰めなおす。
お歳暮シーズンなので、新巻き鮭がごろんごろん転がっている。部屋は寒くてたまらない。
だが、一階の割れ物よりは楽である。
割れ物はどうしても人手がかかる。バイトはそこに集中されるわけだが、これにも分担が
ある。
まず集荷された荷物を各都道府県ごとに分ける。これは、バイト全員が最初にやる。
次に
1.都内向けの荷物をベルトコンベアーに乗せていく係
2.ベルトコンベアーに乗っている荷物を、自分の担当エリアのものだけ拾う係
3.拾った荷物をさらに細かいエリアに仕分ける係
4.それぞれのエリアのケージ(集荷用のでっかいカゴ)に隙間なく詰めていく係
5.満杯になったケージをトラックの待つ出荷場まで出して、空のケージを持ってくる係
に分けられる。
私は2の作業(ピックと呼ばれる)をやることが多かった。
この作業は、目が疲れる。流れてくる荷物に貼られている数字(81-69など)を瞬時に
読み取って、手前に引かなければならない。
年末はお歳暮が大量にあるから、ベルトコンベアーのスピードが「高速」になっている。
そうすると、目の錯覚で、ベルトコンベアーが止まって、自分が流れているように見える。
荷物にもいろいろあって、メロンとかスイカはもちろん、生タマゴのパックが流れてきた
ことがあった。腹が立ったのは鉄アレイだ。こんなもの宅配便で送るか?
ゴルフバッグなんかは大きいから大変だ。しかも裏返しになっていてラベルの数字が読め
ないこともある。
小さい箱だから、と油断していると、工業用の部品でやたらと重いものもあったっけ。
ときどき、日本酒や醤油の一升瓶が割れて、作業場がぷんと臭うこともある。
撮り損ねた荷物は、ベルトコンベアーの終点にたまって、再び最初から乗せられる。
ピックが慣れていないと、滝のように次から次へと荷物が流れてくる。
あまり同じエリアのものが多いと叱られる。
こういう作業を、朝まで数ラウンドやるのである。
休憩時間に夜食を食べて、ふと外を見るとお台場の観覧車がきれいに点灯していて、
やるせない気持ちになったのを今でも憶えている。
ゴム引きの軍手は、数日でボロボロになるので、自動販売機で新しいのを買う。
むろん自腹だ。
今まで、宅配便を出したり受け取ったりしていたが、こんな過酷な作業が間にあるとは
思わなかった。
それが仕事だろ、と言われればそれまでだが、知っておいても損はないと思う。
クリックひとつで何でも自宅まで届けられる便利さの裏側には、このような女工哀史(?)が
あるのよ。