「世界征服」は可能か? 

「世界征服」は可能か? (ちくまプリマー新書)

「世界征服」は可能か? (ちくまプリマー新書)

もともとはトークライブの内容をベースにしたもので、基本的には漫談である。
なので、アハハと笑っておしまいの話だが、最後の方にちょっとまともなことが書いてあった。
いろいろ突っ込みどころは多いけど、アニメ・特撮好きの人には楽しめると思う。


初版本の帯には
『あなたはどんな支配者タイプ?
 A 魔王タイプ
 B 独裁者タイプ
 C 王様タイプ
 D 黒幕タイプ』
と書いてある。


たしか岡田斗司夫は10年以上前に「週刊SPA!」で「人生の取説」という連載をしており、そ
のときも人間のタイプを4つに分類していた。
たぶん、新しい血液型判断のようなものにしたかったのだと思うが、まったく流行らなかった。
彼はこのようなパターン化した類型で説明するのが好きなのかもしれない。


本書にも書いてあるが、ズバリ「世界征服は可能か?」というと、不可能である。
つまり、アニメや特撮に出てくる悪の組織のようなやり方だと、大変な無理をしなければ目的を
達成することはできないのだ。
超兵器や改造人間を作る技術力があれば、まともに起業してフツーの会社で商売した方がよほど
儲かるのですね。


21世紀の情報化社会で、悪の組織が世界を統治することには、ほとんど意味がない。
むしろ、世界中のあらゆる揉め事を管理しなければならないので、うまみがまったくない、とい
うのが岡田の主張である。私もこれは正しいと思う。


では、いまの時代に世界征服をするというのは、どういうことか。
本書から引用すると

 では「世界征服」とはなにか? それは人々から平和な生活を奪う行為です。平和というのは
「現在の社会秩序が保たれている状態」を指します。
 つまり「悪による世界征服」とは、人々の幸福と平和=「現状の価値観や秩序の基準」を破壊
することなんですね。
 では「現代の価値・秩序基準」とはなにか? それは「自由主義経済」と「情報の自由化」です。
 しかし、自由主義経済というのは、実は「貧富の差の肯定」だったりします。(中略)
 強者を肯定し、弱者を軽蔑する理論。それが自由主義経済の根本的欠陥です。


 もうひとつの「情報の自由化」とはどういうことでしょうか? 自由化された情報は、「学ぶ
プロセス」自体を軽視します。何年も研究してきた専門家の意見も、ネットのブログのちょっと
した雑感も同じ「情報」という価値で判断されてしまいます。(中略)
 個人から信念や価値観や考える力を奪い、社会風潮やネット内での流行=「祭り」のみで生きる
ことを当たり前と思わせる文化。それが「情報の自由化」の暗黒面です。


 いま、私たちが「悪」を考えるなら、この二つを敵とするしかありません。なぜって、「悪」と
いうのは、「その時代の価値・秩序基準を破壊すること」なんですから。


なんだか、ちょっと左っぽい人の意見みたいだが、結論としてはこういうことだそうだ。
この提言が実現されたとしても、さらに新しい「悪」が登場し、秩序を破壊していくのではないか、
と思うのだが、そのあたりの話は書いていない。


現在のように経済や情報が高度に複雑化すると、たしかに単体としての「悪」は成立しにくい。
金正日のような分かりやすい人は、前世紀の遺物である。
にもかかわらず、いまの外交のプロトコールは、あいかわらず領土拡大を目的とした時代のままで
はなかろうか? 


もちろん、中国やインドやロシアのように、領土拡大を本気で狙っている国はある。
しかし、それは自国の経済がテイクオフしてないからであり、指導者が、領土を広げればわが国は
豊かになる、と信じているからであろう。
(だったら、なんで米国はカナダとメキシコに戦争をしかけないのだろうね?)


今の時代に他国を攻めても、あまりメリットはないよ、ということが世界中で合意できれば、むや
みに軍拡することもないだろう。
なので、貧乏な国をどうやって豊かにするのかを考えれば、戦争のリスクは少なくなるんじゃない
かなぁ、と思う。


本文と写真はまったく関係ありません

世界征服を企む熊井ちゃん
川 釻_ゝ釻||<まずは関東制圧だぜ