ネタバレがあるので隠します。
ピクサー印のアニメにハズレなし、と思っていたのだが、今回はちょっとやっちゃった
みたいだ。
私個人としては面白かったのだが、これは一般性のない映画である。
アメリカ車が好きな人なら楽しめるだろうが、クルマに興味のない人にとっては、
ただ退屈なだけの作品かもしれない。
ストーリーをひとことで言うなら、「才能に溺れた若者が、田舎町で他人に敬意を
払うことを覚えて復活する話」である。
マイケル・J・フォックス主演の「ドク・ハリウッド」みたいだ、と思ったのだが
誰も知るまい。
物語は、いちおうウェルメイドな話にはなっている。
ちゃんと山場もあるし、感動するような場面もあるのだが、なにしろキャラクターが
全部クルマなのである。
例えば、主人公マックイーンはフォード・マスタング、田舎町で知り合う美人弁護士は
ポルシェ911、町のタイヤ屋さんはイタリア訛りの英語を喋るフィアット500、といった
具合である。
どこの国のクルマか、どのくらいの値段のクルマか、ということが分かれば、映画は
より楽しめるのだが、そうでないと「美人のポルシェ」と言われてもピンとこないと
思う。
唯一キャラが立っていたのは、レッカー車のメーターくんで、典型的な米国の教養の
ない田舎ものを好演(?)していた。
(最後はサビだらけのボディをピカピカにしてもらうと思ってたのだが、違った)
また、町医者で裁判官でもあるドク・ハドソンは1951年型のハドソン・ホーネットだ
そうだが、アメ車好きじゃないと何がどうすごいのか分からん。
しかも、この映画で唯一の悪役といえるレーシングカーがいるのだが、車種が分から
ない(というか、見る人が見たらすぐに分かるのだろうけど)
結局、登場するクルマのほとんどが米国製であり、これでは世界の映画市場で評価
されまい。
せめて日本車やフランス車も登場させてほしかった。
それに、最後の山場となるレースも、インディ500のような、ただぐるぐる回るコース
である。米国人以外、何がおもしろいのか分からない。
モナコGPみたいなコースだったらドラマもあるのに。
ただ、そのレースシーンの迫力は満点だった。
日本は「グランツーリスモ」というゲームを作りながら、ついにこういう映画を一本も
制作できなかったのは恥ずべきだろう。
私は、この作品のもうひとつのテーマは「町おこし」だと思う。
この点については、米国だけでなく、世界の田舎町が共感するだろう。
ただ、いまのところ解決策を見つけるのは難しい。
映画のラストのようにはならないのである。
映画「カーズ」は、ピーター・ボグダノヴィッチ監督の名作「ラスト・ショー」を
反転させたものだと私は思う。
交差点にぶら下がっている信号機のシーンは、「ラスト・ショー」へのオマージュだ。
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なお、エンドロールにはこれまでのピクサー社作品のちょっとしたパロディがあるので
お見逃しなく。さっさと席を立っちゃうと損するよ!