震災と鉄道

震災と鉄道 (朝日新書)

震災と鉄道 (朝日新書)

JR東日本の不作為を鋭く突いた、タイムリーな本だった。
東日本大震災で寸断されたJR東日本の線路で、現在までに復旧して
いる路線は少ない、と著者は述べている。


実際、JR東日本のサイトで確認してみたが、この本の執筆時以降に
運行を再開する予定の路線は3ヶ所だった。
全線が復旧するのはいつになることやら。


先日、JR西日本福知山線脱線事故で、経営者に責任はない、という
判決が出た。
私は、大事故の責任をすべて経営者に押し付けることはできないと
思うのだが、じゃあ、その組織を動かしてきたのは誰か、と問われ
れば、やはり経営者ではないかとも思う。
難しい裁判だった。


本書では、JR東日本の企業体質は東京電力と似ている、と書いてある。
私は、JR東海JR西日本、あるいは九州電力だって同じような企業体
質だろうと思っている。


べつに日本の大企業だけがそうではなく、たいていの組織は、巨大に
なれば責任の所在が曖昧にならざるを得ないのだろう。


大きな組織の中で正しいことをやろうとしたら、たぶん責任をとらさ
れて出世できなくなるのだろう。
オリンパスの英国人元社長は例外的な存在ではあるまいか)


となると、組織をダウンサイジングする選択肢があると思うが、大競
争時代にそんなバカなことに耳を傾ける人はいない。


高度資本主義は金儲けのうまいオッサンだけが権力を握る。
そして、金儲けのうまいオッサンというのは、たいてい倫理観が欠如
しているのである。