スペースカウボーイ

スペースカウボーイ 特別版 [DVD]

スペースカウボーイ 特別版 [DVD]

年寄りの冷や水」という言葉がピッタリの映画だった。
米国で老人であることは、かくも厳しいのか、と思ったです。


日本もそういうふうになってきてるけど、米国は若さに最も価値を置く文化で、永遠に
成熟することを知らない。
それに無自覚なところが、ヨーロッパやアジアの一部の人たちをイラつかせるのだろう。
もっとも、世界中のほとんどの人は、米国の若くエネルギッシュな文化をキャッチアップ
しようとがんばってるわけだが。


映画は、クリント・イーストウッドたちがスペースシャトルで宇宙へ行って、旧ソ連
人工衛星を修理するのだが、実はその人工衛星には秘密が‥‥という話である。
まあ、いろいろ突っ込みどころがある物語だが、主眼は老人が宇宙飛行士になる、という
一点のみだ。
たぶん、ジョン・グレンが98年にスペースシャトルに搭乗したのをきっかけに企画された
んだろう。


さすがに、4人の老人たちのキャラクターの描き分けはうまい。
愛妻家のエンジニアはクリント・イーストウッド、すぐにカッとなる頑固者のパイロットは
トミー・リー・ジョーンズ、女たらしの設計士はドナルド・サザーランド、心やさしい
牧師はジェームズ・ガーナー、が演じている。
それぞれの演技は、素晴らしい。


あと、NASAの女性エンジニア役のマーシャ・ゲイ・ハーデンがよかった。
こういう言い方はアレだが、微妙にブサイクなので、逆に頭が良さそうな感じが出て
いて、説得力があった。
あんまり美人だと、ウソっぽいからね。
(彼女は後にイーストウッド監督の「ミスティック・リバー」にも出演している)


ただ、言いたいことは、まだまだ若い者には負けん、というメッセージだけで、悪役に
徹していたNASAの偉い人(ジェームズ・クロムウェル)や、地上で待っていた女性の
その後などは放ったらかしだ。フランク・シナトラの“フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン”
が流れると、歌に説得力があるから、なんとなく完結した雰囲気になってる
けど、トミー・リー・ジョーンズの最後なんて‥‥ひどくねぇか? 


見終わってから、私は笠智衆を想った。
若いときから老け役で、ずっと老人ばかり演じ続けていた笠智衆は、老いというものを
どう考えていたのだろう? 


老人は、確かに醜くなって、役に立たなくなるかもしれないけど、若いときより楽になる
部分だって多いはずだ。
私は、すでに老人のような生き方をしているので、みんなも足掻いてないで早く楽に
なればいいのに、と思うよ。