*[映画]すずめの戸締まり

平日のレイトショーで観客が10人ぐらい。
同じ時間帯に3つの劇場を使っていたからか、すごく分散していた
気がする。


「すずめの戸締まり」は、面白いロードムービーだった。
八幡浜や西条がロケ地になっていて、愛媛県民としても嬉しい。


「君の名は」のような複雑な時系列もなく、「天気の子」のように
引っかかる部分もなく、すごくスムーズな展開だった。
(西条から神戸までのヒッチハイクは都合がよすぎた気もするが)
いい意味で熟練を感じさせるストーリーテリングだと思う。


災害を鎮魂する、というテーマも今のタイミングがベストだった
のではなかろうか。
主人公が愛媛県を旅したのも、2018年の西日本豪雨の水害の
被災地だったからかもしれない。
多くの人は忘れているだろうけど。



ところで、なぜ草太は椅子になってしまったのだろう。
すずめの母が作ったもので、大切にしていたものだから、
だろうけど、設定の段階で椅子にしたのはなぜなのか? 
ハンドメイドのものなら、ぬいぐるみでもかまわなかった
はずだし、けん玉みたいなおもちゃでもよかった。


たぶん、新海誠は無意識に決めていたのだと思うが、
椅子にされた男が、女子高生に座られたり踏み台に
される、というシチュエーションには、隠された
フェティシズムがあるような気もする。
さらに3本脚なのも何かの欠如を暗示しているとか。
いや、これは穿ち過ぎだな。
3本脚の椅子が動き回るアクションが面白いから
だろう。



あの要石のネコをダイジンと名付けたのは
誰なのかも気になる。


すずめに嫌われて痩せネコになってしまうところが
よかった。再びふっくらするのも可愛い。
最後はかわいそうだったな。



ミミズは自然災害のメタファーである。
扉を締めて鍵をかけることは、自然をコントロール
することでもあるが、それを神事のような形で視点を
ずらしている。


隕石の落下や豪雨はコントロールできなかったが、
今回はなんとか封じている。
そこが本作のエンターテインメントとしての成熟と
いうことになるのかなぁ。