- 作者:馬部 隆弘
- 発売日: 2020/03/17
- メディア: 新書
なんとか理解できた気がする。
これは告発の書である。
江戸時代に作られた偽の史料を本物だと思って、あるいは敢えて目をつぶって
町おこしをしている枚方市よ、どうなんだ、という挑戦状である。
というのも、著者が椿井文書の研究をしようと思ったきっかけが、専門家の
言うことを無視して子供向けの副読本を発行した枚方市の姿勢だからだ。
行政が専門家の意見を聞かない、というのはいつごろからあるのだろう?
ちなみに著者が枚方市の非常勤職員として働いていたのは2002年から10年間
だそうだ。
その間の市長は中司宏と竹内脩で、中司宏は現在大阪維新の会から立候補して
大阪府議会議員になっている。
↓
それにしても、江戸時代に大量の偽文書を作った椿井政隆はどんな人だった
のか興味がある。
30歳ぐらいから偽の家系図や寺社の縁起を作って、工房ができるほど繁盛
して68歳で亡くなっている。
自分の経歴も盛っているので正しいかどうかは分からない。
誰かキャラクター像を膨らませてドラマにしてくれたらいいのだが、偽物の
系図や絵図を作った、というだけでは面白くないだろう。
そこは作家や脚本家の腕の見せ所か。
↓
近畿地方のみならず、各地に椿井政隆のような職人はいたのだろう。
研究が進めば、第二、第三の椿井が発見されるかもしれない。
それはちょっと楽しみなようでもあり不安でもある。
松山市は正岡子規と夏目漱石に依存しているが、近代の人なので
さすがに偽文書をもとに行政が何かを作っていることはないと思う。
でも、道後温泉の由緒はどうなのだろう。
伊予国風土記にもとづいて語られているあたりは怪しいのではないか。