日本人とは何かを探るためのシリーズとして、2巻目で韓国を旅するのは
意図的なことだろう。
百済が滅ぼされた白村江の戦いのころは、朝鮮半島と対馬や北九州あたりで
人が通っており、多くの難民が日本に帰化した。
彼らがいなければ飛鳥文化はなかっただろう、と記している。
また、秀吉の朝鮮出兵のとき、日本から朝鮮に降伏して帰化した人々が
いたという。「慕夏堂文集」に沙也可という人が朝鮮に帰化して金忠善と
名乗って朝鮮軍の武将になり出世して隠遁した、ということが書いてある。
もっとも「慕夏堂文集」は後世に作られた偽書であろうと結論づけているが、
沙也可という人物は実在したであろう、としている。
これらは1970年ごろの推測であるが、現在ではどのようにアップデート
されているのか知りたい。
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この旅行記で、司馬遼太郎一行は何度か韓国人に不愉快なことをされている。
それらについて、司馬遼太郎は鷹揚に受け流しており、大人な態度だと言える。
が、ホテルのマッサージを頼んでぼったくられたことについては、多少怒って
いるように思えた。
1970年ごろの日韓関係と2020年の日韓関係は大きく違っていると思うが、
基本的なところはそれほど変化していないような気もする。
本書で司馬遼太郎は朝鮮人の美点と欠点を冷静に観察しており、その事実は
いまでも通じると思う。