読売新聞に連載していた浅田次郎の小説「流人道中記」が終わった。

姦通の罪を犯した35歳の旗本を19歳の与力が江戸から松前藩まで押送

する物語である。

 

第1回はものすごくとっつきが悪くて(偉い侍たちが罪人をどうするのか

という会議の場面が続く)、はたしてこの小説はどうなんだろうと思ったが、

旅に出てからはもう面白くて、一級のロードムービーを見ているようだった。

 

バディものの例に漏れず、身分の高い旗本と末端の役人である与力の仲は

最悪なのだが、旅を通してお互いの事情が分かってきて、若い与力は教育

されるのである。

 

道中でさまざまな事件が起こるが、旗本はそれらを鮮やかに解決していく。

とても地の果てまで流刑になる罪人とは思えない。

なぜそんな罪を犯すことになったのか、旅の終盤に語られ、読者は深い

ため息をつくだろう。

 

それだけに、最後はあっさりと終わってしまって、もう少し余韻がほしかった。

いったい彼らはその後どうなるのか。幕末の話なので、明治維新後も生きて

いたら何をしたのか知りたい。

 

映画化するなら、青山玄蕃は阿部寛、乙次郎は池松壮亮あたりで

どうだろうか?